民法-民法177条 (不動産に関する物権の変動の対抗要件)
H18-3相続と登記
ア Aがその所有する土地をBに譲渡したが、その旨の登記をしないまま死亡し、Aを相続したCがその土地について相続登記をしてこれをDに譲渡し、その旨を登記した場合、Bは、Dに対し、土地所有権の取得を対抗することができる。
誤り
被相続人からの譲受人(=B)は、相続人(=C)に対しては、登記なくして不動産の所有権を主張できる。
相続人は被相続人を包括承継 (民法896条本文)するので、相続人と被相続人を同一人とみなし、譲受人との関係は当事者同士の関係で、対抗関係ではないとされる。
一方、生前の被相続人からの譲受人(=B)と相続人からの譲受人(=D)とは、対抗関係となる(最判昭33.10.14)。
本肢の場合、Dが先に登記を受けたので、BはDに対し、土地所有権の取得を対抗することができない。(民法177条)
H19-2物権変動
エ Aは、B所有の不動産をBから購入したがいまだ所有権の移転の登記を経由していなかった。Cは、この事情を十分に知りつつ専らAを害する目的で、当該不動産をBから購入して所有権の移転の登記を完了し、さらに、善意のDに当該不動産を転売し、Dへの所有権の移転の登記をした。
所有権を主張することができない
登記の欠缺を主張することが信義に反するような者を背信的悪意者(=C)といい、民法177条の第三者には含まれない。
本肢において、第2買主である背信的悪意者(=C)から、不動産を譲り受け登記を備えた者(=D)は、
第1買主(=A)に対する関係で背信的悪意者と評価されない限り、その不動産の所有権取得を、第1買主(=A)に対抗することができる(最判平8.10.29)。
H20-1質権
エ 同一の不動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、登記の前後による。
誤り
不動産質の対抗要件は、登記であり、(民法177条)
同一の不動産に数個の質権が設定されたとき、その質権の順位は、登記の前後による。(法4条1項)
法4条(権利の順位)
第四条 同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後による。
2 付記登記(権利に関する登記のうち、既にされた権利に関する登記についてする登記であって、当該既にされた権利に関する登記を変更し、若しくは更正し、又は所有権以外の権利にあってはこれを移転し、若しくはこれを目的とする権利の保存等をするもので当該既にされた権利に関する登記と一体のものとして公示する必要があるものをいう。以下この項及び第六十六条において同じ。)の順位は主登記(付記登記の対象となる既にされた権利に関する登記をいう。以下この項において同じ。)の順位により、同一の主登記に係る付記登記の順位はその前後による。
H20-2不動産の物権変動
オ A所有の甲土地がAからBに売却されたが、その旨の登記がされる前に、甲土地はAからC、CからDへと順次売却され、その旨の登記がされた。Bに対する関係で、Cは背信的悪意者であるがDは背信的悪意者ではない。この場合に、Bは、Dに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができない。
正しい
第2買主たる背信的悪意者(C)から不動産を譲り受け、登記を備えた者(D)は、
自分自身が第1買主(B)に対する関係で背信的悪意者と評価されない限り、その不動産の所有権取得を第1買主(B)に対抗することができる(最判平 8.10.29)。
よって、Bに対する関係で、Dは背信的悪意者ではない場合、Bは、Dに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができる。
H21-1取得時効と登記
Aは、平成2年1月1日、B所有の甲土地を、自己の所有地であると過失なく信じて占有を開始し、以後、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と甲土地を占有している。
教授: まず、平成10年1月1日に甲土地がBからCに譲渡されたという事例で質問します。この場合において、Aは、平成15年1月1日に、Cに対して甲土地の取得時効を主張することができますか。
学生:ア Aは、所有権の移転の登記をしなくても、Cに対して甲土地の時効取得を主張することができます。
正しい
B所有の不動産をAが自主占有して時効期間が進行中に、当該不動産がBからCに譲渡された後、平成12年1月1日にAの時効が完成した。
このとき、Aは、C所有の不動産を時効取得したものとし、AとCは物権変動の当事者類似の関係となり、Cは「第三者」(民法177条)にはあたらない。
よって、Aは、登記なくして,時効取得をCに対抗できる(最判昭41.11.22)。
教授: 次に、CがBから甲土地を譲り受けたのが平成13年1月1日であったという事例で質問します。この場合には、Aは、平成15年1月1日に、Cに対して甲土地の時効取得を主張することができますか。
学生:イ この場合には、Aは、所有権の移転の登記をしなければ、Cに対して時効取得を主張することができません。
正しい
B所有の不動産をAが時効取得したものの,いまだ登記をしていない間に、BがCに土地を譲渡した場合、AとCは,対抗関係に立つ(最判昭33.8.28)。
(Aが時効取得した不動産を,BがCに対して譲渡する行為は、B→A, B→Cの二重譲渡と考えられ、)Aは,登記なくして,時効取得をCに対抗することができない。
一方、AとBは当事者の関係にあり、Bは「第三者」にはあたらず、Aは,登記なくして,時効取得をBに対抗することができる。
教授: 同じ事例で、Aが、平成15年1月1日に、Bに対して甲土地の時効取得を主張する場合は、どうでしょうか。
学生:ウ この場合も、Aは、所有権の移転の登記をしなければ、Bに対して時効取得を主張することができません。
誤り
B所有の不動産をAが時効取得したものの,いまだ登記をしていない間に、BがCに土地を譲渡した場合、AとCは,対抗関係に立つ(最判昭33.8.28)。
(Aが時効取得した不動産を,BがCに対して譲渡する行為は、B→A, B→Cの二重譲渡と考えられ、)Aは,登記なくして,時効取得をCに対抗することができない。
一方、AとBは当事者の関係にあり、Bは「第三者」にはあたらず、Aは,登記なくして,時効取得をBに対抗することができる。
教授: では、同じ事例で、Aが、平成2年1月1日から20年が経過するのを待って、その後に、20年間の占有に基づいて、Cに対して甲土地の時効取得を主張することはできますか。
学生:オ Aは、自己の所有地であると過失なく信じて甲土地の占有を開始したので、20年の取得時効を主張することはできません。
誤り
時効の効果は、時の経過により生ずるのではなく、援用の意思表示によって確定的に生ずるので、
自己の所有地であると過失なく信じて甲土地の占有を開始したA(10年の短期時効取得を援用することができる者)が、20年間占有を継続した場合でも、20年の長期取得時効を援用することができる。(大判昭25.11.20)。
H22-2不動産の物権変動
エ Bが所有する土地をCに売却して所有権の移転の登記をし、CがAにその土地を売却したがその所有権の移転の登記をする前に、BがCの代金未払を理由にBC間の売買契約を解除した。
AがBに対して土地の所有権を主張することができない
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。(民法545条)
売買契約解除前の第三者Aが、上記の第三者として保護されるためには、Aに権利保護要件として登記が必要である(大判大10.5.17)。
本肢は、BがCに土地を売却し、Cがその土地をAに売却した後に、BがBC間の売買契約を解除し、登記はCにある場合だが、
B又はAに要求される登記が民法117条の対抗要件であれば、Bには登記がないため自己の所有権をAに対抗することができないが、
Aに要求される登記は権利保護要件であり、Aに登記がない以上、Aは保護される第三者とはいえず、解除の遡及効により無権利者となるため、Bには登記がなくても自己の所有権をAに対抗することができる。
つまり、AはBに対して土地の所有権を主張することができない。
オ 未成年者Aは、法定代理人Cの同意を得ないで、A所有の土地をDに売却し、Dは、Aが未成年者でDへの売却についてCの同意を得ていないことを知らないBに対し、その土地を売却した。その後、CがAのDに対する売買の意思表示を取り消した。
AがBに対して土地の所有権を主張することができる
制限行為能力もしくは強迫を理由として取消しがされた場合、第三者に対する関係では、第三者が善意であったとしても、また登記がなくても、第三者に対抗することができる。
本肢は、未成年者Aが土地をDに売却し、Dがその土地を善意のBに売却した場合であるが、
Aの法定代理人であるCが、AのDに対する売買の意思表示を取り消すことで、AがBに対して土地の所有権を主張することができる 。
不動産に関する物権の得喪・変更は、その登記をしなければ 「第三者」に対抗することができない。(民法117条)
この「第三者」とは、当事者もしくはその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張す るにつき正当な利益を有する者をいう。(大判明41.12.15)