R1-9建物の個数
不動産登記法上の建物の個数に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アイ 2 アオ 3 イウ 4 ウエ 5 エオ
ア 下の{立面図略図}のように、近接して建てられた二棟の建物で、それぞれの2階部分に出入りするためには同一の屋外の階段を用いるほかないときは、この二棟の建物は一個の建物として取り扱われる。
○
専有部分とは、区分建物の内,壁,扉,天井,床などにより他の部分から遮断されている構造上の独立性を有し、独立して住居,店舗,事務所または倉庫その他の建物としての用途に供することができる利用上の独立性を有している部分であり、区分所有権の目的となる(区分所有法2条3項)。
他の専有部分あるいは同一の部分を通らずに外部と出入可能でなければ, 利用上の独立性を有しているとはいえず、
区分所有権の目的となる一個の建物として取り扱うことはできない。(昭38.9.28 民甲2659号,建物 認定 123頁)
本肢のように、近接して建てられた二棟の建物で、それぞれの2階部分に出入りするためには同一の屋外の階段を用いるほかないときは、両建物それぞれの利用上の独立性を認められないため、この二棟の建物は一個の建物として取り扱われる。
イ 下の{平面図略図}のように、一筆の土地の上に同一の者の所有に属する三棟の建物がある場合には、それぞれの建物が異なる借主の居宅として利用されているときでも、三棟の建物を一個の建物として取り扱うことができる。
×
効用上一体として利用される複数の建物は,所有者の意思に反しない限り、1個の建物として取り扱うが、(準則 78条1項)
効用上一体として利用される複数の建物を1個の建物として取り扱うには、主従の関係が必要であり、
集団的に建築され、それぞれ同一の目的に供される数棟の建物は、それぞれ独立の1個の建物として登記すべきで ある(昭 52.10.5 民三 5113号)。
よって、本肢の、それぞれの建物が異なる借主の居宅として利用されているときは、効用上一体として利用される状態にあるとはいえず、
これらの建物のうち、どれかを主である建物とし、その他を附属建物として取り扱うことはできない。
つまり、三棟の建物を一個の建物として取り扱うことはできない。
準則78条1項
(建物の個数の基準)
第78条
1 効用上一体として利用される状態にある数棟の建物は,所有者の意思に反しない限り,1個の建物として取り扱うものとする。
ウ Aが所有権の登記名義人である甲建物に近接して、甲建物と効用上一体として利用する乙建物をAが新築した場合において、甲建物に抵当権の設定の登記がされているときは、甲建物を主である建物、乙建物を附属建物とする一個の建物として取り扱うことはできない。
×
抵当権の設定の登記がされているときでも、附属建物の新築による建物表題部変更登記の制限はない。
よって、Aが所有権の登記名義人である甲建物に近接して、甲建物と効用上一体として利用する乙建物をAが新築した場合において、
甲建物に抵当権の設定の登記がされているときでも、
(乙建物を独立の1個の建物として登記しないときは、)
甲建物を主である建物、乙建物を附属建物とする一個の建物として
甲建物について附属建物の新築による「表題部の変更の登記」を申請しなければならない。
このように、抵当権が設定されている甲建物の附属建物として乙建物を新築した場合には、当該抵当権は、乙建物にも及ぶこととなる。
法51条1項
(建物の表題部の変更の登記)
第五十一条 第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
準則78条1項
(建物の個数の基準)
第78条
1 効用上一体として利用される状態にある数棟の建物は,所有者の意思に反しない限り,1個の建物として取り扱うものとする。
エ 数個の専有部分に通ずる廊下で建物の構造上区分所有者の一部の共用に供されるべき建物の部分は、一個の建物として取り扱うことができる。
×
廊下や玄関,エレベーター, パイプスペースなどのように区分所有者が共同で使用する部分や,壁など一棟の建物の維持に必要な部分は、法定共用部分とされる(区分所有法4条1項,準則 78条3項)。
この法定共用部分は, 区分所有権の目的となる専有部分ではないため,1個の建物として登記できない。
区分法4条1項
(共用部分)
第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
オ 共用部分である旨の登記がある建物であっても、一個の建物として取り扱われる。
○
共用部分である旨の登記は、専有部分である建物の部分及び附属の建物について、区分所有者の規約により共用部分とした旨を第三者に対抗する登記であり、既に表題登記がされた建物についてされるものである。
この共用部分である旨の登記は、一個の建物の登記記録における表題部の原因及びその日付欄に記録される。
よって、共用部分である旨の登記がある建物であっても、一個の建物として取り扱われ、
建物の表題部の変更の登記、建物の滅失の登記の申請義務が課せられる。
区分法1条
(建物の区分所有)
第一条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
区分法4条2項
(共用部分)
第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
法58条1項
(共用部分である旨の登記等)
第五十八条 共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記に係る建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号(第三号を除く。)及び第四十四条第一項各号(第六号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
法51条1項
(建物の表題部の変更の登記)
第五十一条 第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
法57条
(建物の滅失の登記の申請)
第五十七条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。