H26-2物権的請求権
物権的請求権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アイ 2 アウ 3 イエ 4 ウオ 5 エオ
ア 所有権に基づく物権的請求権は、10年の消滅時効により消滅する。
所有権は,取得時効の対象となるが、(民法162 条)
消滅時効の対象とはならない (民法166 条参照)。
所有権に基づく物権的請求権も、消滅時効にかかることはない(大判大5.6.23)。
イ 所有者は、その所有権の取得について対抗要件を備えていなくても、その所有物を不法に占有する者に対して、所有権に基づく返還請求権を行使することができる。
民法177条によれば,不動産に関する物権の得喪・変更は、登記をしないと 「第三者」に対抗することができないとされている。判例は、この「第三者」とは,当事者もしくはその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいうとして、限定的に捉えている(大連判明 41.12.15)。
不法占拠者は、「第三者」にあたらない(大判昭2.2.21)。
ウ 所有権に基づく妨害排除請求権を行使するには、妨害状態が発生したことについて相手方に故意又は過失がなければならない。
物権的請求権の行使には,侵害者の故意,過失は問わない。
エ 占有者が所有者に対して提起した占有の訴えに対して、所有者は、その所有権に基づく反訴を提起することができる。
占有の訴えは、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない (民法202条2項)。これは,占有の訴えに対して防御方法として本権の主張はできないことを意味するだけで、本権に基づく反訴を提起することはできる(最判昭40.3.4)。
占有回収の訴えの被告は, 「自分には所有権という本権があるから」という理由で原告の請求を拒むことはできないが,
一方、同じ訴訟手続内で,原告に対して「反訴」として所有権に基づく返還請求訴訟を提起して, 「自分には所有権があるから」という理由で目的物の返還を請求することはできる。
オ 所有者は、その所有物について権原を有しない者から賃借して占有する者だけでなく、当該所有物を賃貸した者に対しても、所有権に基づく返還請求権を行使することができる。
物権的返還請求権は、間接占有者に対しても返還を請求しうる(大判昭13.1.28)。
例えば,BがA所有の土地に何らの権限なく建物を建て,この建物をCに賃貸している場合、
Aは、Cだけでなく,Bに対しても建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。