H23-9土地の境界
下図のような甲土地及び乙土地の所有権の及ぶ範囲(以下本問において「所有権界」という。)又は筆界に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、幾つあるか。下図のような甲土地及び乙土地の所有権の及ぶ範囲(以下本問において「所有権界」という。)又は筆界に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、幾つあるか。
1 1個 2 2個 3 3個 4 4個 5 5個
ア 甲土地と乙土地との筆界がa-bである場合において、甲土地の所有者Aと乙土地の所有者Bが所有権界及び筆界をともにc-dとするとの合意をしたときは、所有権界及び筆界は、c-dとなる。
誤り
筆界は、
所有者間の合意により
移動することはできない。
よって、
甲土地と乙土地との筆界がa-bである場合において、
甲土地の所有者Aと乙土地の所有者Bが
所有権界及び筆界をともにc-dとするとの合意をしたときは、
所有権界は、c-dとなるが、筆界に移動はない。
イ 甲土地と乙土地との所有権界及び筆界がいずれもa-bである場合において、甲土地の所有者Aと乙土地の所有者Bがともに所有権界及び筆界をc-dと認識したまま、その後Aがabdcaで囲まれた土地を時効取得したときは、甲土地と乙土地との所有権界及び筆界は、c-dとなる。
誤り
土地の所有権を取得した場合であっても、
そのことにより、筆界が移動することはない。
よって、
甲土地と乙土地との所有権界及び筆界がいずれもa-bである場合において、
甲土地の所有者Aと乙土地の所有者Bが
ともに所有権界及び筆界をc-dと認識したまま、
その後Aがabdcaで囲まれた土地を時効取得したときは、
甲土地と乙土地との所有権界は、c-dに変更するが、筆界に移動はない。
ウ 甲土地と乙土地との所有権界及び筆界がいづれもa-bである場合において、所有権界及び筆界がc-dであると信じてabdcaで囲まれた土地を占有している甲土地の所有者Aから、所有権界及び筆界がc-dであるとの説明を受け、第三者がそれを信じて購入したときは、甲土地と乙土地との所有権界及び筆界は、c-dとなる。
誤り
abdcaで囲まれた土地が甲土地に含まれると信じて
甲土地を購入した第三者がいる場合でも、
それにより筆界がa-bからc-dに移動しない。
よって、
甲土地と乙土地との所有権界及び筆界がいづれもa-bである場合において、
所有権界及び筆界がc-dであると信じて
abdcaで囲まれた土地を占有している甲土地の所有者Aから、
所有権界及び筆界がc-dであるとの説明を受け、
第三者がそれを信じて購入したときであっても、
甲土地と乙土地との所有権界及び筆界は、いづれもa-bであることに変わりはない。
エ 乙土地の所有者が国である場合において、甲土地と乙土地との筆界がa-bであるときに、甲土地の所有者Aと国との間で、境界をc-dと定める国有財産法上の官民境界確定協議の契約が調った場合には、所有権界と筆界は異なることとなる。
正しい
乙土地の所有者が国である場合において、
甲土地と乙土地との筆界がa-bであるときに、
甲土地の所有者Aと国との間で、
境界をc-dと定める国有財産法上の官民境界確定協議の契約が調った場合には、
所有権界はc-dに確定されるが、筆界に移動はなくa-bのままであり、
所有権界と筆界は異なることになる。
東京地判昭和56・3・30
国有財産法上の官民境界確定協議とは、
国有地と隣接地との境界があきらかでないため国有財産の管理に支障がある場合、
国と隣接地所有者の間において
国有地と隣接地の所有権の範囲(所有権界)を確定する私法上の契約である。
オ 筆界確定訴訟において、甲土地と乙土地との筆界をa-bとする確定判決があった場合であっても、甲土地の所有者Aと乙土地の所有者Bは、甲土地と乙土地との所有権界をc-dとする合意をすることができる。
正しい
筆界確定訴訟において、
甲土地と乙土地との筆界をa-bとする確定判決があった場合、
甲土地と乙土地との筆界をa-bに確定するが、
所有権界については、筆界に関わりなく
所有者間で所有権界をc-dと合意をすることができる。