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H19-3占有訴権

占有訴権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。

1 アウ   2 アエ   3 イエ   4 イオ   5 ウオ 

 

ア Aが占有する土地に隣接地の樹木が倒れてくるおそれがある場合には、Aは、隣接地の所有者であるBに対し、占有保全の訴えにより、樹木が倒れないようにするための予防措置を講ずるとともに損害賠償の担保を供与することを請求することができる。

 

誤り

 

占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、

占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。(民法199条)

これらのいずれか一方を選択して請求できるが、両方を請求することはできない。

 

民法199条(占有保全の訴え)

第百九十九条 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。

  

  

イ AがBに無断でBの所有する土地上に建物を建築して占有している場合において、Bが当該建物を解体するために重機を当該土地に持ち込もうとしているときは、Aは、Bに対し、占有保全の訴えにより、建物の解体の予防を請求することができる。

 

正しい

 

占有の訴えを提起できるのは、占有者及び他人のために占有をする者であるが、(民法197条)

占有者(=A)であれば、その権原の有無を問わず、占有を侵害した相手方(=B)の善意・悪意も問わない。

よって、 Aは、Bに対し、占有保全の訴えにより、建物の解体の予防を請求することができる。

 

民法197条(占有の訴え)

第百九十七条 占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。

  

   

ウ 建物の賃貸借契約が終了したにもかかわらず、賃借人Aが建物の占有を継続する場合には、賃貸人Bは、Aに対し、占有回収の訴えにより、建物の返還を請求することがっできる。

 

誤り

 

占有回収の訴えは、占有者がその占有を奪われたときに請求することができる。(民法200条1項)

「占有を奪われた」とは、強盗により動産の占有を失った場合や、居住地から追い出されたような場合であり、

本肢の、賃貸借契約が終了した後も賃借人が不法占拠している場合は、「占有を奪われた」とはいえない。

 

民法200条(占有回収の訴え)

第二百条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

 

 

エ Aが占有する建物の占有をBが奪い、その後、これをCに貸与した場合であっても、Aは、なおBに対し、占有回収の訴えにより、建物の返還を請求することができる。

 

正しい

 

Aによる建物の占有を奪った侵奪者(=B)が、それを第三者(=C)に貸与した場合、侵奪者は、代理人により間接占有していることになり、侵奪者に対して占有回収の訴えを提起することができる。(大判昭5.5.3)

なお、占有回収の訴えは、原則として、占有を侵奪した者(=B)の特定承継人(=C)に対して提起することができないが、

その承継人(=C)が侵奪の事実を知っていたとき(悪意)は、その者に対して占有回収の訴えを提起することができる。(民法200条2項)

 

民法200条(占有回収の訴え)

第二百条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

 

 

オ Aが自宅の庭先に置いていた自転車をBが盗んで乗り回し、その後、これをCに売り渡した場合には、Aは、Cが占有を始めた時から1年以内であれば、占有回収の訴えにより、自転車の返還を請求することができる。

 

誤り

 

占有回収の訴えは、原則として、占有を侵奪した者(=B)の特定承継人(=C
)に対して提起することができない。(民法200条2項)

占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。(民法201条3項)

 

民法200条(占有回収の訴え)

第二百条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。

 

民法201条 (占有の訴えの提起期間)

第二百一条 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後一年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から一年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。
2 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。
3 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。

 

 

 

 

 

出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成