H19-3占有訴権
占有訴権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
1 アウ 2 アエ 3 イエ 4 イオ 5 ウオ
イ AがBに無断でBの所有する土地上に建物を建築して占有している場合において、Bが当該建物を解体するために重機を当該土地に持ち込もうとしているときは、Aは、Bに対し、占有保全の訴えにより、建物の解体の予防を請求することができる。
正しい
占有の訴えを提起できるのは、占有者及び他人のために占有をする者であるが、(民法197条)
占有者(=A)であれば、その権原の有無を問わず、占有を侵害した相手方(=B)の善意・悪意も問わない。
よって、 Aは、Bに対し、占有保全の訴えにより、建物の解体の予防を請求することができる。
民法197条(占有の訴え)
第百九十七条 占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。
ウ 建物の賃貸借契約が終了したにもかかわらず、賃借人Aが建物の占有を継続する場合には、賃貸人Bは、Aに対し、占有回収の訴えにより、建物の返還を請求することがっできる。
誤り
占有回収の訴えは、占有者がその占有を奪われたときに請求することができる。(民法200条1項)
「占有を奪われた」とは、強盗により動産の占有を失った場合や、居住地から追い出されたような場合であり、
本肢の、賃貸借契約が終了した後も賃借人が不法占拠している場合は、「占有を奪われた」とはいえない。
エ Aが占有する建物の占有をBが奪い、その後、これをCに貸与した場合であっても、Aは、なおBに対し、占有回収の訴えにより、建物の返還を請求することができる。
正しい
Aによる建物の占有を奪った侵奪者(=B)が、それを第三者(=C)に貸与した場合、侵奪者は、代理人により間接占有していることになり、侵奪者に対して占有回収の訴えを提起することができる。(大判昭5.5.3)
なお、占有回収の訴えは、原則として、占有を侵奪した者(=B)の特定承継人(=C)に対して提起することができないが、
その承継人(=C)が侵奪の事実を知っていたとき(悪意)は、その者に対して占有回収の訴えを提起することができる。(民法200条2項)