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H19-2物権変動

次のアからオまでの事例のうち、判例の趣旨に照らしAがCに対して(Dが登場する事例ではDに対して)不動産又は動産の所有権を主張することができるものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。

1 アウ   2 アエ   3 イエ   4 イオ   5 ウオ

 

ア Aは、Bにだまされて自己所有の不動産をBに売ったが、Bの詐欺に気付き、Bに対して売買契約を取り消すとの意思表示をした。しかし、取消しまでの間に、Bが善意のCに当該不動産を売ってしまっていた。

 

所有権を主張することができない

 
善意かつ無過失の第三者には、取消しを対抗することができない(民法96条3項)。

 

民法96条(詐欺又は強迫)

第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

 

イ Aは、Bに強迫されて自己所有の不動産をBに売ったが、強迫状態を脱し、Bに対して売買契約を取り消すとの意思表示をした。しかし、取消しまでの間にBが善意のCに当該不動産を売ってしまっていた。

 

 所有権を主張するができる 

 

強迫による意思表示の取消しは、詐欺場合と異なり、第三者護規定なく、し前の善意無過失の第三者にも対抗することができる(民法963項反対解釈)

 

民法96条(詐欺又は強迫)

第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

 

ウ Aは、自己所有の不動産の登記がBの名義になっていることを知りながら、この状態を事実上容認し、長期間放置していた。Bは当該不動産の登記がBの名義になっていることを利用して、善意のCに当該不動産を売ってしまった。

 

所有権を主張することができない 

 

厳密な意味での虚偽表示にあたらな場合でも、定の要件満たすときは、取の安全を確保するため、民法94条2項を類推適用される(判昭 45.9.22)

本肢の場合、不動産の登記がBの名義であると知りながら放置したAは、善意のCに対し、不動産の所有権を主張できない。

 

民法94条(虚偽表示)

第九十四条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

  

 

エ Aは、B所有の不動産をBから購入したがいまだ所有権の移転の登記を経由していなかった。Cは、この事情を十分に知りつつ専らAを害する目的で、当該不動産をBから購入して所有権の移転の登記を完了し、さらに、善意のDに当該不動産を転売し、Dへの所有権の移転の登記をした。

 

所有権を主張するない 

 

登記の欠缺を主張することが信義に反するような者を背信的悪意者(=C)といい、民法177条の第三者には含まれない。

本肢において、第2買主である背信的悪意者(=C)から、不動産を譲り受登記を備えた者(=D)は、

第1買主(=A)に対する関係で背信的悪意者と評価されない限り、不動産の所有権取得を、第1買主(=A)に対抗することができる(最判8.10.29)

 

民法177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。 

 

 

オ Aは、B所有の動産をBから買ったが、後日持ち帰ることにして、当該動産をBに保管してもらっていた。しかし、Bは、善意のCにも当該動産を売ってしまい、Cの依頼を受けてCのために当該動産を保管していた。

 

所有権を主張することができる

 

物権変動における対抗要件は、「渡し」である(178 条)

代理人(=B)が自己の占有物を以後本人(=A)のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得するとされる「占有改定」も、Aに対する「引渡し」として認られる(183)

本肢の場合、先に占有改定による「引渡し」という対抗要件を備えたAがCに優先し、

Aは、Cに対し動産の所有権を主張することができる。

 

民法178条(動産に関する物権の譲渡の対抗要件

第百七十八条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

 

民法183条(占有改定)

第百八十三条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。

 

 

出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成