H19-2物権変動
次のアからオまでの事例のうち、判例の趣旨に照らしAがCに対して(Dが登場する事例ではDに対して)不動産又は動産の所有権を主張することができるものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
1 アウ 2 アエ 3 イエ 4 イオ 5 ウオ
ウ Aは、自己所有の不動産の登記がBの名義になっていることを知りながら、この状態を事実上容認し、長期間放置していた。Bは当該不動産の登記がBの名義になっていることを利用して、善意のCに当該不動産を売ってしまった。
所有権を主張することができない
厳密な意味での虚偽表示にあたらない場合でも、一定の要件を満たすときは、取引の安全を確保するため、民法94条2項を類推適用される(最判昭 45.9.22)。
本肢の場合、不動産の登記がBの名義であると知りながら放置したAは、善意のCに対し、不動産の所有権を主張できない。
エ Aは、B所有の不動産をBから購入したがいまだ所有権の移転の登記を経由していなかった。Cは、この事情を十分に知りつつ専らAを害する目的で、当該不動産をBから購入して所有権の移転の登記を完了し、さらに、善意のDに当該不動産を転売し、Dへの所有権の移転の登記をした。
所有権を主張することができない
登記の欠缺を主張することが信義に反するような者を背信的悪意者(=C)といい、民法177条の第三者には含まれない。
本肢において、第2買主である背信的悪意者(=C)から、不動産を譲り受け登記を備えた者(=D)は、
第1買主(=A)に対する関係で背信的悪意者と評価されない限り、その不動産の所有権取得を、第1買主(=A)に対抗することができる(最判平8.10.29)。
オ Aは、B所有の動産をBから買ったが、後日持ち帰ることにして、当該動産をBに保管してもらっていた。しかし、Bは、善意のCにも当該動産を売ってしまい、Cの依頼を受けてCのために当該動産を保管していた。
所有権を主張することができる
動産物権変動における対抗要件は、「引渡し」である(178 条)。
代理人(=B)が自己の占有物を以後本人(=A)のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得するとされる「占有改定」も、Aに対する「引渡し」として認められる(183条)。
本肢の場合、先に占有改定による「引渡し」という対抗要件を備えたAがCに優先し、
Aは、Cに対し動産の所有権を主張することができる。