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H19-1条件

次の対話は、法律行為の条件に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。

1 アイ   2 アウ   3 イオ   4 ウエ   5 エオ

 

教授: 今日は、法律行為の条件について聞きたいと思います。Aが、Bとの間で、Bが来年の7月に開催される大会に優勝した場合には、Bに対し、来年の4月分からさかのぼって奨学金を給付するとの合意をしたとしましょう。その後、Bが実際に優勝した場合には、Bは4月分から奨学金を請求することができますか。
学生:ア これは、条件の成就により奨学金の給付という契約の効力を発生させるものですので、停止条件に該当しますが、停止条件の付された法律行為は停止条件が成就したときからその効力を生ずるものですので、Bは4月分から奨学金を請求することはできません。

 

誤り

 

停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずるのが原則だが、(民法127条1項)

当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う (民法127条3項)。 

よって、Bは、4月分からさかのぼって奨学金を請求できる。

 

民法127条 (条件が成就した場合の効果)

第百二十七条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。

 

 

教授: 当事者が停止条件を付して契約を締結したが、実際には、停止条件とした事実が既に発生していたとします。この契約の効力はどうなりますか。
学生:イ そのような場合には、その条件は付されなかったのと同様に扱われ、有効であることになります。

 

正しい

 

条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときは、その法律行為は無条件とする(民法131条1項)。

この場合には、その条件は付されなかったのと同様に扱われ、契約の効力は有効である。

 

民法131条(既成条件)

第百三十一条 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする。
2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件とする。
3 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する。

  

 

教授: ある土地の所有者Cが、隣接地の所有者Dの知らないうちに両土地間の境界線をCに有利に移設してくれれば、Eに対して50万円を贈与する旨の契約をEとの間で締結したとします。この契約の効力はどうなりますか。
学生:ウ 契約に付された条件は不法なものですから、その条件は付されなかったのと同様に扱われ、有効であることになります。

 

誤り

 

不法な条件を付した法律行為は、無効とする(民法132条)。 

本肢のように、不法条件(境界線移設)を付することにより、法律行為自体(贈与の契約)が不法性を持つ場合は、無効となる。

 

民法132条(不法条件)

第百三十二条 不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

  

  

教授: ある動産の所有者が、5年後にGに対してその動産を贈与するが、Fの気が変わった場合にはいつでも契約は効力を失うとの条件を付して書面により贈与契約を締結したとします。この契約の効力はどうなりますか。
学生:エ これは、Fの意思のみに係る条件を付したものですので、契約自体が無効となります。

 

誤り

 

停止条件」の成就が、債務者(不利益を受ける者)の意思のみにかかる法律行為は、無効である (134条)。

例えば、「Aの気が向いたら、100万円をBに贈与する」と契約しても、

これは債務者(=A)の意思のみにかかる法律行為であるので、法律上の効力は発生しない。

これに対し、「解除条件」の成就が、債務者の意思のみに係る場合も、または債権者の意思のみに係る場合も、有効である。

よって、本肢の「Fの気が変わった場合に効力を失う」=「解除条件」付契約は有効である。 

 

民法134条(随意条件)

第百三十四条 停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

  

   

教授: HがIとの間で、契約日から7日以内に動産の修理を完了した場合には、Iに対して所定の修理代金に加えて割増しで修理代金を支払うとの内容の契約を締結したとします。この場合において、HがIの修理道具をわざと損壊し、そのため、5日以内に修理作業を完了することが可能であったのに、修理作業の完了が10日後に遅延してしまったときには、どうなりますか。
学生:オ この場合には、Hは故意に条件の成就を妨害しています。したがって、Iは、条件が成就したものとみなしてHに対して割増分の修理代金の支払をも請求することができます。

 

正しい

 

条件が成就することによって不利益を受ける当事者が、故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる(民法130条1項)。

よって、本肢の場合、Iは、条件が成就したものとみなし、Hに対して割増分の修理代金の支払をも請求することができる。

 

民法130条(条件の成就の妨害等)

第百三十条 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
2 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

  

 

出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成