H18-1代理
Aは、Bから、B所有の甲土地を売却することについての代理権の授与を受け、Cとの間で、甲土地を1億円で売り渡す旨の売買契約(以下「本件契約」という。)を締結した。この場合に関する次の1から5までの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
3 Aが、Bから授与された代理権が消滅した後に、Bの代理人として本件契約を締結した場合、Bは、Cが代理権の消滅を過失なく知らなかったとしても、Cからの本件契約の履行請求を拒絶することができる。
誤り
代理権消滅後の表見代理が成立し、代理行為の効果が本人に帰属するためには、
相手方の善意・無過失が要件となる(民法112条1項)。
よって、本人であるBは、第三者であるCからの本件契約の履行請求を拒絶することができない。
民法112条(代理権消滅後の表見代理等)
第百十二条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
4 Aが甲土地の代金を着服する意図を持ってBの代理人として本件契約を締結し、その代金を自ら消費した場合、Bは、CがAの意図を本件契約締結時に過失なく知らなかったとしても、Cに対し、本件契約の無効を主張することができる。
誤り
代理人がその権限内において「本人のためにすることを示してした」意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。(民法99条1項)
これを「顕名」というが、その趣旨は、相手方に法律効果の帰属主体を明らかにする点にあり、
代理人(=A)が自己または第三者の利益を図るという目的で、客観的には顕名により、代理権の範囲内の行為をすることを、代理人の権限濫用という。
この場合、代理行為の効果は本人(=B)に帰属し、代理人(=A)が自己又は第三者の利益を図る目的について、相手方(=C)が悪意又は有過失であれば、無権代理行為とされる。(民法107条)
よって、Bは、CがAの意図を本件契約締結時に過失なく知らなかった場合、Cに対し、本件契約の無効を主張できない。