H18-2不動産
次の対話は、建物に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ
教授: 物には不動産と動産とがありますが、建築中の建物は、どのように扱われますか。
学生:ア 土地の定着物ですから不動産に当たりますが、基礎工事の段階では土地の一部と扱われるのに対し、屋根や壁ができて建物とみられる段階に至ると、土地とは別の不動産と扱われます。
正しい
不動産とは、土地およびその定着物をいう(民法86条1項)。
建物を新築する場合、建物がその目的とする使用に適当な構成部分を具備する程度に達していない限り、完成した建物ということはできないが、
建物として不動産登記法により登記するには、それが完成した建物である必要はなく、
工事中の建物でも、既に屋根と周壁を有し、土地に定着した一個の構造物として存在すれば足り、床や天井を備えている必要はない。(大判昭10.10.1)
民法86条(不動産及び動産)
第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
教授: 一棟の建物の一部について取得時効は成立しますか。
学生:イ 一棟の土地の一部について取得時効が認められるのと同様に、一棟の建物の一部についても、その部分が区分建物としての独立性を備えているか否かにかかわらず、取得時効の成立が認められます。
誤り
一筆の土地の一部は、取得時効の対象となりうるが、(大判大13.10.7)
一棟の建物の一部については、その部分が区分建物としての独立性(構造上及び利用上)(区分法1条)を備えていなければ、その取得時効は認められない。
区分法1条(建物の区分所有)
第一条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
民法162条(所有権の取得時効)
第百六十二条 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。
教授: 借地上の建物に設定されていた抵当権が実行されて、買受人が建物の所有権を取得した場合、借地権はどうなりますか。
学生:エ 借地権は建物の所有権とは別個の権利ですので、借地権は買受人に移転しません。
誤り
借地上の建物に抵当権を設定した場合、その借地権(敷地利用権)にも抵当権の効力が及ぶため、(最判昭40.5.4)
建物の所有者(抵当権設定者)が有していた借地権は、抵当権の実行(競売)により、その買受人に移転する。
教授: 建物の所有者が移築を目的として当該建物を解体した場合には、その建物に設定されていた抵当権はどうなりますか。
学生:オ 解体された建物は不動産でなくなりますから、当該建物に設定されていた抵当権は消滅することになります。
正しい
抵当権は物権であるから、目的物の滅失により抵当権も消滅する。