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H27-19筆界特定制度

筆界特定制度次の対話は、A所有の甲土地とB所有の乙土地との間の境界についての紛争が生じた事例に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

1 アウ   2 アエ   3 イウ   4 イオ   5 エオ

教授:Aが甲土地を売却するために地積の更正の登記の申請を予定していたところ、隣接する乙土地との間で境界紛争が生じた事例について考えてみましょう。まず、AとBは、和解契約によって甲土地と乙土地との間の筆界を確定することができますか。 

学生:ア AとBは、甲土地と乙土地の所有権の範囲を和解契約によって確定することができるのと同様に、筆界についても、和解契約によって確定することができます。

×

筆界は、登記により形成された公法上の境界であって、関係当事者の合意で左右することのできない性質のものであり、私人の合意で形成された所有権界とは異なるため、

本肢のように、私人間で取決めをしたり,和解や調停をしたりすることで、筆界の移動や創設はできない。

盛岡地裁判例昭40.7.14

筆界は、公法上のものであって関係当事者の合意で左右することのできない性質のものであり、和解又は調停をすることができないが、

当事者間に争いがある場合に、双方の土地所有権の限界について合意することは差し支えないとされている。 

 

教授:次に、Aが筆界特定の申請をする場合について考えてみましょう。筆界特定について必要な事実の調査は筆界調査委員が行いますが、どのような者が筆界調査委員に任命されますか。 

学生:イ 筆界調査委員は、職務を行うのに必要な専門的知識及び経験を有する者のうちから、法務局又は地方法務局の長が任命するものとされており、土地家屋調査士が任命されることもあります。

法務局および地方法務局には,筆界特定について必要な事実の調査を行い、筆界特定登記官に意見を提出させるため,筆界調査委員が若干名置かれており、(法127条1項)

この委員は、調査士,司法書士,弁護士など職務を行うのに必要な専門的知識および経験を有する者が任命される(法127条2項)。

 

法127条1項、2項

(筆界調査委員)
第百二十七条 法務局及び地方法務局に、筆界特定について必要な事実の調査を行い、筆界特定登記官に意見を提出させるため、筆界調査委員若干人を置く。
2 筆界調査委員は、前項の職務を行うのに必要な専門的知識及び経験を有する者のうちから、法務局又は地方法務局の長が任命する。 

法128条1項

(筆界調査委員の欠格事由)
第百二十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、筆界調査委員となることができない。
一 禁錮こ以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
二 弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)、司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)又は土地家屋調査士法(昭和二十五年法律第二百二十八号)の規定による懲戒処分により、弁護士会からの除名又は司法書士若しくは土地家屋調査士の業務の禁止の処分を受けた者でこれらの処分を受けた日から三年を経過しないもの
三 公務員で懲戒免職の処分を受け、その処分の日から三年を経過しない者 

 

教授:Aからの筆界特定の申請に基づき筆界特定登記官が特定した筆界が、Aが意図していた筆界と異なっていた場合には、Aは、それを不服として審査請求をすることができますか。 

学生:ウ 筆界特定登記官が行う筆界特定には行政処分としての法的効力は付与されておらず、登記官の処分ではありませんので、Aは、審査請求をすることはできません。

筆界特定制度は、筆界調査委員という外部専門家を関与させ、必要な手続保証を与え、一方の当事者の合意がない場合でも筆界についての公的な認定判断を示す制度である。

よって、筆界特定登記官が行う筆界特定には行政処分としての効力は付されておらず、登記官の処分ではないので、Aは、審査請求をすることができない。(最判昭39.10.29)

なお、筆界特定の結果について不服がある場合には、筆界確定を求める訴えを提起する方法をとることができ、この筆界確定を求める訴えに係わる訴訟(筆界確定訴訟)の確定判決によって定められた筆界は、その時から真実の筆界となる。

 

最判平7.3.7

筆界確定を求める訴えは、公簿上の特定の地番により表示される甲乙両土地が相隣接する場合、その筆界が事実上不明なため争いがあるときに、裁判によって新たにその筆界を定めることを求める訴えである。

 

教授:では、甲土地と乙土地との間の筆界が特定された場合には、登記官は、その結果に基づき、職権で地積の更正の登記、地図の訂正等の措置をとることができますか。  

学生:エ 筆界特定の結果に基づき、職権で地積の更正の登記、地図の訂正等の措置をとることができるのは、筆界特定登記官に限られますので、筆界特定登記官でない登記官はそれらの措置をとることができません。

×

筆界特定がされた場合は,対象土地の所有者等に対し,地積更正登記や地図訂正を促すものとされ、その者が申請や申出をしない場合に,登記官は職権で地積更正登記や地図訂正などの措置をとるものとされているが、

この場合の登記官は筆界特定登記官に限らず、筆界特定登記官でない登記官(管轄登記所の登記官)もそれらの措置をとることができる。(平18.1.6民二27号)。
 

平18.1.6民二27号

筆界確定がされた場合の登記事務の取扱いについて、次のような内容で依命通知がされている。

筆界特定を行った筆界特定登記官は、筆界特定手続記録を管轄登記所に送付する場合、対象土地について筆界特定に伴い地積に関する更生の登記又は地図等の訂正をすることが相当と認めるときは、管轄登記所の登記官に、その旨の意見を伝えるものとされている。

この場合、管轄登記所の登記官は、速やかに、当該筆界特定登記官の意見及び筆界特定手続記録の内容を踏まえ、対象土地につき、地積に関する更生の登記又は地図等の訂正を職権ですることができるかどうかを調査し、対象土地の登記記録の地積に錯誤があると認められた時には、まず、対象土地の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人に対し、地積に関する更生の登記の申請を促し、その者が申請をしないときは、職権で対象土地について地積に関する更生の登記をするものとされている。

一方、地図の訂正をすべき要件を満たすと認められたときは、まず、対象土地の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの相続人その他の一般承継人に対し、地図の訂正の申出を促すものとし、その者が申出をしないときは、職権でその訂正をするものとされている。

  

教授:最後に、AがBに対して、甲土地と乙土地との間の筆界について筆界確定訴訟を提起し、その確定判決を得た場合において、Bは、その判決内容を不服として、筆界特定の申請をすることができますか。 

学生:オ 筆界確定訴訟は、登記所の手続きとは別個のものですので、Aが甲土地と乙土地との間の筆界について筆界確定訴訟の確定判決を得た場合であっても、Bは、甲土地と乙土地との間の筆界について、別途、筆界確定の申請をすることができます。

×

筆界確定を求める訴えに係わる訴訟(筆界確定訴訟)の確定判決によって定められた筆界は、その時から真実の筆界となるため、

筆界確定訴訟が確定したときには、もはや筆界特定の申請の意味がなく、却下される(法132条1項6号)。

 

法132条1項6号

(申請の却下)
第百三十二条 筆界特定登記官は、次に掲げる場合には、理由を付した決定で、筆界特定の申請を却下しなければならない。ただし、当該申請の不備が補正することができるものである場合において、筆界特定登記官が定めた相当の期間内に、筆界特定の申請人がこれを補正したときは、この限りでない。
六 対象土地の筆界について、既に民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決(訴えを不適法として却下したものを除く。第百四十八条において同じ。)が確定しているとき。 

 

 

 

 

出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成