R2-3囲繞地通行権
相隣関係に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アイ 2 アオ 3 イウ 4 ウエ 5 エオ
ア 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(以下「袋地」という。)の譲受人は、袋地について所有権の移転の登記を経由しなくても、その袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して、公道に至るため、囲繞地を通行することができる権利(以下「囲繞地通行権」という。)を主張することができる。
○
袋地(他の土地に囲まれて公道に通じない土地)所有権を取得したときは、その登記がなくても、
囲繞地(その袋地を囲んでいる他の土地)所有者および囲繞地に利用権を有する者に対して、囲繞地通行権(公道に至るため、囲繞地を通行することができる権利)を主張することができる。
イ 他の土地及び水路によって囲まれており、水路を通行すれば公道に至ることができる土地の所有者は、公道に至るため、当該他の土地を通行することはできない。
×
1.他人の土地に囲まれて公道に出られない土地(袋地)および,
2.池沼・河川・水路・海または高い崖を経なければ公道に出られない土地(準袋地)
の所有者は、公道に出るため,その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地)を通行することができる(民法210条1項)。
(公道に至るための他の土地の通行権)
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
ウ 自動車による通行を前提とする囲繞地通行権は、囲繞地の所有者の承諾がなければ成立しない。
×
自動車による通行を前提とする民法210条通行権の成否及びその内容は,
他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,自動車による通行を前提とする民法210条通行権が認められることにより、他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきであるが、(最判平 18.3.16)
囲繞地の所有者の承諾を要するとはしていない。
エ 囲繞地について囲繞地通行権を有する袋地の所有者が、囲繞地に通路を開設するためには、囲繞地の所有者の承諾を要する。
×
囲繞地に通路を開設するためには、通行権者が袋地を利用するために必要な限度で,かつ,囲繞地にとって損害の最も少ない場所や方法でなければならない(民法211条1項)。
必要があれば,通行権者は通路を開設することもできる(民法211条2項)。
(公道に至るための他の土地の通行権)
第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。
オ 共有物の分割によって袋地を生じた場合に、袋地の所有者が、公道に至るため、他の分割者の所有する土地について有する通行権は、当該他の分割者の所有する土地に特定承継が生じた場合であっても、消滅しない。
○
分割によって公道に通じない土地(袋地)が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合も同様である。
例1)Bが所有する一筆の土地を、甲土地,乙土地に分筆した上、甲土地をAに譲渡した場合
→Aは乙土地のみを通ることができる(民法213条2項)。
例2)その後、BがCに乙土地を譲渡した場合
→ Aの乙土地に対する通行権は消滅せず、Aは他の土地(丙土地)を通行できない(最判平2.11.20)。
第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。