R1-6土地の滅失登記
次の対話は、土地の滅失の登記に関する教授と学生の対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アウ 2 アエ 3 イウ 4 イオ 5 エオ
教授: 土地が滅失した場合には、いつまでに当該土地の滅失の登記を申請しなければなりませんか。
学生:ア 滅失した土地の表題部所有者又は所有権の登記名義人は、当該土地が滅失した事実を知った日から1月以内に、当該土地の滅失の登記を申請しなければなりません。
×
表題部所有者または所有権の登記名義人は、
土地が滅失したときから1月以内に土地の滅失登記を申請しなければならない(法 42 条)。
法42条
(土地の滅失の登記の申請)
第四十二条 土地が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該土地の滅失の登記を申請しなければならない。
教授: 一筆の土地の全部を掘って池を作り、常時水面下に没するようになった場合には、当該一筆の土地について、土地の滅失の登記を申請しなければなりませんか。
学生:イ はい、土地の滅失の登記を申請する必要があります。
×
土地の滅失の登記とは、土地が海面又は河川の流水下に没した状態になるなど、権利の客体として存在しなくなったときに、その土地の登記を抹消するものである。
水面下の土地でも、権利の客体として不動産登記の対象となるものは、滅失登記の対象とはならない。
つまり、河川,湖および池沼などの水面下の土地でも、公有水面下の土地を除いたものは、登記の対象となる。
なお、かんがい用水でない水の貯留池の地目は、池沼とし、(準則68条8号)
かんがい用水としての貯留池の地目は、ため池とする。(準則68条17号)
よって、一筆の土地の全部を掘って池を作り、常時水面下に没するようになった場合には、「土地の滅失の登記」ではなく、「地目の変更の登記」を申請する必要がある。
準則68条
(地目)
第68条
次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
八 池沼 かんがい用水でない水の貯留池
十七 ため池 耕地かんがい用の用水貯留池
教授: それでは、国土交通大臣の免許を受けて、一般運送の用に供する目的で一筆の土地の全部を掘って人工的に水路を設けたことにより、当該一筆の土地が常時水面下に没するようになった場合には、当該一筆の土地について滅失の登記を申請しなければなりませんか。
学生:ウ はい、土地の滅失の登記を申請する必要があります。
×
土地の滅失の登記とは、土地が海面又は河川の流水下に没した状態になるなど、権利の客体として存在しなくなったときに、その土地の登記を抹消するものである。
水面下の土地でも、権利の客体として不動産登記の対象となるものは、滅失登記の対象とはならない。
つまり、河川,湖および池沼などの水面下の土地でも、公有水面下の土地を除いたものは、登記の対象となる。
水路用地を掘って人工的に設けた水路を運河といい、運河に関する水路や道路, 堤防などの土地が「運河用地」として取り扱われる。(運河法12条、準則 68条14号)
よって、一般運送の用に供する目的で一筆の土地の全部を掘って人工的に水路を設けたことにより、当該一筆の土地が常時水面下に没するようになった場合には、「土地の滅失の登記」ではなく、「地目の変更の登記」を申請する必要がある。
準則68条
(地目)
第68条
次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
十四 運河用地 運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地
運河法12条1項1号
第十二条 左ニ掲クルモノヲ以テ運河用地トス
一 水路用地及運河ニ属スル道路、橋梁、堤防、護岸、物揚場、繋船場ノ築設ニ要スル土地二 運河用通信、信号ニ要スル土地
教授: それでは、春分又は秋分における満潮時において、一筆の土地の全部が海面下に没するようになった場合には、当該一筆の土地について、土地の滅失の登記を申請しなければなりませんか。
学生:エ はい、土地の滅失の登記を申請する必要があります。
○
土地が崩壊して海面下に没する状態となったり、常時継続して水流の敷地になったりした場合には、権利の客体としての土地が存在しなくなった=土地が滅失したといえるため、土地滅失登記を申請する必要がある。
また、公有水面と陸地との境界は、春分または秋分における満潮時(最も海面が高い状態)を標準として定める(昭 31.11.10 民甲 2612号)。
昭34.6.26民甲1287号
一筆の土地の全部が海面下に没するようになった場合には、
当該一筆の土地について、土地の滅失の登記を申請しなければならない。
法42条
(土地の滅失の登記の申請)
第四十二条 土地が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該土地の滅失の登記を申請しなければならない。
教授:がけ崩れによって一筆の土地の一部が常時海面下に没するようになった場合には、当該一筆の土地について、土地の滅失の登記を申請しなければなりませんか。
学生:オ いいえ、この場合は全部が滅失したとは言えません。この場合には、一筆の土地の一部が海面下に没したことによる地積の変更の登記の申請をすることになります。
○
土地の一部が海没したり,河川の水流の敷地となったことで地積が減少した場合、地積の変更登記をする(昭 33.4.11 民事三発 203号)。
よって、がけ崩れによって一筆の土地の一部が常時海面下に没するようになった場合には、当該一筆の土地について、「土地の滅失の登記」ではなく、
一筆の土地の一部が海面下に没したことによる「地積の変更の登記」を申請しなければならない。
法37条1項
(地目又は地積の変更の登記の申請)
第三十七条 地目又は地積について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その変更があった日から一月以内に、当該地目又は地積に関する変更の登記を申請しなければならない。
昭34.6.26民甲1287号
海面に接する一筆の土地の一部が、
常時海面下に没するようになった場合には、
土地の一部が滅失したものとし、
地積が減少したことになる。