R1-13建物に関する登記
建物の表題部の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アイ 2 アエ 3 イウ 4 ウオ 5 エオ
ア 建物の表題部所有者であるAの申請によりされたAを所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記が錯誤により抹消された場合には、その建物の所有者Bの申請又は職権により、当該建物ついての表題登記を改めてすることとなる。
○
所有権の保存の登記がされると、表題部所有者が抹消されるが、
その後, 表題部所有者がした所有権の保存の登記が錯誤により抹消された場合、
表題部所有者を回復するのではなく、当該登記記録の全部が閉鎖される(昭36.9.2 民甲 2163号)。
所有権登記名義人と表題部所有者が同一人である以上、所有権保存登記を抹消することで表題部所有者の適格性も否定され、この誤った登記記録は閉鎖される。
よって、建物の表題部所有者であるAの申請によりされたAを所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記が錯誤により抹消された場合には、
その建物の所有者Bの申請又は職権により、当該建物ついての表題登記を改めてすることとなる。
法74条1項1号
(所有権の保存の登記)
第七十四条 所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
イ 建物の表題部所有者の相続人を所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記が錯誤により抹消された場合には、登記官において当該表題部所有者が所有権を有していたことを確認することができるときであり、かつ、当該建物が現存するときであっても、当該建物の登記記録は閉鎖される。
×
本問の肢アに類似の事例として、
所有権の保存の登記が錯誤により抹消された場合に、その所有権の保存の登記が,
1表題部所有者の相続人その他の一般承継人がした所有権の保存の登記,または、2表題部所有者から区分建物の所有権を取得した者がした所有権の保存の登記、であった場合,
所有権の保存の登記が抹消されても、表題部所有者(1被相続人、2区分建物の原始取得者)の適格性まで否定されることにはならないため、
表題部所有者に関する登記事項が回復され、その登記記録は閉鎖されない。(昭36.9.2.民工2163号、昭 59.2.25民三1085号)。
よって、建物の表題部所有者の相続人を所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記が錯誤により抹消された場合には、
登記官において当該表題部所有者が所有権を有していたことを確認することができるときであり、かつ、当該建物が現存するときは、当該建物の登記記録は閉鎖されない。
法74条1項1号
(所有権の保存の登記)
第七十四条 所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
ウ 建物を新築した場合において、不動産工事の先取特権の保存の登記がされた建物の建築が完了したときは、当該建物の所有者は、当該建物の表題登記を申請する必要がない。
×
不動産工事の「先取特権の保存の登記」は、建築工事を行う前に、債権額として工事費用の予算額等を登記するものである。
建物新築工事の「先取特権の保存の登記」がされたときは、
まだ建物はできていないが、先に、「種類, 構造及び床面積は設計書による」旨とともに表題部が作成される。
しかし、これは「建物の表題登記」ではないので、建物完成時には、所有者は、その所有権取得の日から1月以内に、表題登記をしなければならない。
なお、「先取特権の保存の登記」の債権者を保護する趣旨から、建物の建築が完了したときは、所有者は、遅滞なく、建物の表題登記を申請して、所有権の保存の登記をすることを要し,
この表題登記をすることで、先に作成された表題部の「---設計書による」登記事項を抹消し、改めて登記事項が記録され、併せて表題部所有者と、年月日新築の原因日付が記録される。(平21.2.20 民二 500号)
よって、建物を新築した場合において、不動産工事の先取特権の保存の登記がされた建物の建築が完了したときでも、
当該建物の所有者は、当該建物の表題登記を申請する必要がある。
法86条2項1号
(建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記)
2 前項の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号(第三号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 新築する建物並びに当該建物の種類、構造及び床面積は設計書による旨
法47条1項
(建物の表題登記の申請)
第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
エ 所有権の登記がある建物の附属建物を新築する場合において、不動産工事の先取特権の保存の登記がされた後附属建物の建築が完了したときは、当該附属建物が属する建物の所有権の登記名義人は、遅滞なく、当該附属建物の新築による建物の表題部の変更の登記を申請しなければならない。
○
所有権の登記がある建物の附属建物の新築について、不動産工事の先取特権の保存の登記がされた場合、
まだ建物はできていないが、先に、附属建物欄に「種類,構造及び床面積は設計書による」旨とともに表題部に記録される。
しかし、これは「建物の表題部の変更の登記」ではないので、建物完成時には、所有者は、その所有権取得の日から1月以内に、表題部の変更の登記をしなければならない。
なお、「先取特権の保存の登記」の債権者を保護する趣旨から、附属建物の建築が完了したときは、所有者は、遅滞なく、建物の表題部の変更の登記を申請をすることを要し,
当該登記をすることで、先に作成された表題部の「---設計書による」登記事項を抹消し、改めて登記事項が記録され、併せて附属建物の符号と、年月日新築の原因日付が記録される(平21.2.20 民二 500号)。
法86条2項1号、3項
(建物を新築する場合の不動産工事の先取特権の保存の登記)
2 前項の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号(第三号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 新築する建物並びに当該建物の種類、構造及び床面積は設計書による旨3 前項第一号の規定は、所有権の登記がある建物の附属建物を新築する場合における不動産工事の先取特権の保存の登記について準用する。
法51条1項
(建物の表題部の変更の登記)
第五十一条 第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
法87条2項
(建物の建築が完了した場合の登記)
2 前条第三項の登記をした場合において、附属建物の建築が完了したときは、当該附属建物が属する建物の所有権の登記名義人は、遅滞なく、当該附属建物の新築による建物の表題部の変更の登記を申請しなければならない。
オ Aが表題部所有者である甲建物と、Aが表題部所有者である乙建物の附属建物として登記されている丙建物とが、増築工事により一個の建物となった場合には、甲建物と丙建物が一個の建物となった日から1月以内に、合体後の建物についての建物の表題登記並びに合体前の甲建物及び乙建物についての表題部の登記の抹消を申請しなければならない。
×
本肢における合体後の建物についての建物の表題登記並びに合体前の甲建物及び乙建物についての表題部の登記の抹消(合体による登記等)を申請するには、
その前に、乙建物から丙建物を分割する登記を申請し、丙建物を登記簿上独立した一個の建物となければならない。
よって、Aが表題部所有者である甲建物と、Aが表題部所有者である乙建物の附属建物として登記されている丙建物とが、増築工事により一個の建物となった場合には、
甲建物と丙建物が一個の建物となった日から1月以内に、
まず、乙建物から丙建物を分割する建物の分割の登記を申請し、その登記の完了後、
合体後の建物についての建物の表題登記並びに合体前の甲建物及び丙建物についての表題部の登記の抹消(合体による登記等)を申請しなければならない。
法49条1項
(合体による登記等の申請)
第四十九条 二以上の建物が合体して一個の建物となった場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める者は、当該合体の日から一月以内に、合体後の建物についての建物の表題登記及び合体前の建物についての建物の表題部の登記の抹消(以下「合体による登記等」と総称する。)を申請しなければならない。この場合において、第二号に掲げる場合にあっては当該表題登記がない建物の所有者、第四号に掲げる場合にあっては当該表題登記がある建物(所有権の登記がある建物を除く。以下この条において同じ。)の表題部所有者、第六号に掲げる場合にあっては当該表題登記がない建物の所有者及び当該表題登記がある建物の表題部所有者をそれぞれ当該合体後の建物の登記名義人とする所有権の登記を併せて申請しなければならない。