R1-1物権的請求権
Aが所有し、所有権の登記名義人である甲土地についての物権的請求権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アウ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 エオ
ア Bは、Aに無断で、甲土地上に乙建物を建て、乙建物につきBを所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記をした。その後、Bは、Cに対し、乙建物を売却し、Cが乙建物の所有権を取得したが、乙建物の所有権の登記名義人は、Bのままであった。この場合において、Aは甲土地の所有権に基づき、Bに対しては乙建物の収去を求めることができるが、Cに対しては乙建物の収去を求めることはできない。
×
物権的請求権の相手方は,原則として現実に目的物の支配を侵害する者であるため、Aは、現に乙建物を所有するCに対して乙建物の収去を求めるが、
他人所有の土地上の建物を取得し,自らの意思に基づいて登記を経由した者は,たとえ建物を譲渡したとしても,引き続き登記名義を有する限りは,建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできないため(最判平6.2.8) 、
Aは、Bに対しても乙建物の収去を求めることができる。
イ Aは、Bに対し、甲土地を売却し、Bが甲土地の所有権を取得したが、甲土地の所有権の登記名義人は、Aのままであった。この場合において、甲土地をCが違法に占有しているときは、Bは、甲土地の所有権に基づき、Cに対し、甲土地の明渡しを求めることができる。
○
民法177条によれば,不動産に関する物権の得喪・変更は,登記をしないと 「第三者」に対抗することができないとされている。この「第三者」とは,当事者もしくはその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう(大連判明41.12.15)。
不法占拠者Cは「第三者」にあたらないため、(大判昭2.2.21)。
Bは、甲土地の所有権に基づき、Cに対し、甲土地の明渡しを求めることができる。
ウ Cは、乙動産を所有するBに無断で乙動産を持ち出し、A及びBに無断で甲土地上に乙動産を放置した。この場合において、Aが甲土地の所有権に基づき乙動産を所有するBに対して乙動産の撤去を請求したときは、Bは、乙動産を放置したのがCであることを理由に、その請求を拒絶することができない。
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物権的請求権の行使には,侵害者の故意,過失は問わないため、
Bは、乙動産を放置したのがCであることを理由に、その請求を拒絶することができない。
エ Bは、20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と甲土地を占有していた。この場合において、Bが取得時効を援用した後は、Aは、Bに対して、甲土地につき、所有権に基づく物権的請求権を行使することができない。
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時効完成時の土地所有者Aに対しては、Bは、登記なくして時効による所有権の取得を対抗できるため、
Bが取得時効を援用した後は、Aは、Bに対して、甲土地につき、所有権に基づく物権的請求権を行使することができない。
オ Bが甲土地に地役権を有する場合において、Cが違法に、かつ、恒常的に甲土地に自動車を駐車し、Bによる地役権の行使を妨げ、地役権を侵害しているときは、Bは、地役権に基づき、Aに対してはCによる地役権侵害行為を禁止するために必要な措置をとるように求めることはできるが、Cに対しては地役権侵害行為の禁止を求めることはできない。
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地役権は物権であり、地役権者は、承役地における妨害排除請求権や妨害予防請求権が認められるため、
Bは、Aに対してはCによる地役権侵害行為を禁止するために必要な措置をとるように求めることができ、Cに対しては地役権侵害行為の禁止を求めることができる。
一方、地役権は占有する権利ではないため、承役地の返還請求権は認められない(最判平17.3.29)。