土地家屋調査士・測量士補独学最短合格塾

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H30-22建物書式

 次の〔見取図〕のとおり、A市B町一丁目301番及び302番の土地上には、P部分(〔見取図〕のG,O, J,K,L及びGの各点を順次結んだ直線で囲まれた部分をいう。以下同じ。)、Q部分(〔見取図〕のM,H,I,N及びMの各点を順次結んだ直線で囲まれた部分をいう。以下同じ。)及び増築部分(〔見取図〕のO,M,N, J及びの各点を順次結んだ直線で囲まれた部分をいう。以下同じ。)で構成されている建物(以下「本件建物」という。)が所在している。
 土地家屋調査士乙川花子は、【事実関係】のとおり、P部分及びQ部分の所有権の登記名義人である甲山太郎から、登記に関する相談を受けて事情を聴取し、必要となる全ての表示に関する登記の申請手続についての代理並びに当該登記に必要な調査及び測量の依頼を受け、【登記記録の内容】のとおり登記記録を調査した上、必要となる登記の申請をした。
 以上に基づき、次の問1から問3までに答えなさい。

①前文、調査図:「申請人」、「対象建物」、「申請する登記」を読み取る。

・申請人 :甲野太郎
・対象建物 :P部分の建物とQ部分の建物及び増築部分で構成された建物
・申請する登記:必要となる全ての表示に関する登記

 

 

問1 土地家屋調査士乙川花子が甲山太郎の依頼を受けて行うべき登記の申請書を、別紙第22問答案用紙の第1欄(その1)の登記申請書の空欄を埋めて、完成させなさい。
 また、次の文は、土地家屋調査士乙川花子が【事実関係】6で甲山太郎の希望した登記申請をすることはできないと判断した理由である。(ア)から(エ)までに入る文言を別紙第22問答案用紙の第1欄(その2)の該当欄に記載しなさい。

 (ア)の関係にない建物二個の間に(イ)を施すことにより、これらを接着させて、その間の(ウ)し、 (エ)の建物となったため。

 

③ 問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。まだ「×:理解できない部分」は読み飛ばす。

問1:登記申請書 ×
【事実関係】6で甲山太郎の希望した登記を申請することができない理由→本件登記を申請すべき理由となる

 

問2 仮に、Q部分を主である建物とし、P部分を附属建物とする登記がされていたとした場合において、【事実関係】2の増改築の工事後に必要となる登記申請について、申請書に記載すべき登記の目的並びに主である建物についての登記原因及びその日付を別紙第 22 問答案用紙の第2欄に記載しなさい。

問2: Q部分=主である建物、P部分=附属建物とした場合、【事実関係】2の増改築工事後に必要となる登記申請 ×

 

問3 別紙第22問答案用紙の第3欄を用いて、問1の登記の申請書に添付する建物図面及び各階平面図を完成させなさい。
 なお、建物図面には、〔見取図〕中、G,H及びLの各点から敷地の筆界線に伸びる矢印線の位置で、敷地と建物の距離を図示しなさい。

問3:問1の登記の申請書に添付する建物図面及び各階平面図 ×

 


(注)
1 本問における行為は全て適法に行われており,法律上必要な書類は全て適法
に作成されているものとする。
2 登記の申請は,書面申請の方法によってするものとする。
3 建物図面は500 分の1の縮尺により、各階平面図は250 分の1の縮尺により、それぞれ作成すること。
4 訂正,加入又は削除をしたときは,訂正は訂正する字句に線を引き,近接箇所に訂正後の字句を記載し,加入は加入する部分を明示して行い,削除は削除する字句に線を引いて,訂正,加入又は削除をしたことが明確に分かるように記載すること。ただし,押印や字数を記入することは要しない。

②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。
・注1:適法であり書類が揃っている:×
・注2:書面申請:×
・注3:建物図面 500 分の 1 ,各階平面図 250 分の 1 :×
・注4:訂正方法:×

 

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【事実関係】

1  P部分は【登記記録の内容】の家屋番号301番の建物、Q部分は【登記記録の内容】の家屋番号302 番の建物である。

 

④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。

(4) 別紙 別紙1:事実関係 
P部分の建物とQ部分の建物は,【登記記録の内容】の既登記建物

 

2  甲山太郎は、昭和60年3月からQ部分の建物及びその敷地を所有して居住していた。甲山太郎は、平成29年1月に、隣接地のP部分の建物及びその敷地が売りに出されたことを知り、これを購入してその所有権の移転の登記を受けた。

2
申請人=甲山太郎は、P部分の建物とQ部分の建物を所有


3  甲山太郎は、P部分とQ部分を居宅として一体的に利用することができるようにするため、後記〔1階間取図〕のとおり、増築部分を増築し、P部分及びQ部分を改築する増改築工事を行い、平成30年10月1日にその工事が完了した。

2・3 
申請人=甲山太郎は、P部分の建物とQ部分の建物を所有
→居宅としてこれらを一体的に利用できるように増改築工事
→工事の完了は平成30年10月1日
(→増築部分も甲山太郎が所有 )

 

4  甲山太郎は、P部分の建物及びその敷地の購入代金は株式会社C銀行から融資を受けて支払ったが、前記3の増改築工事の工事代金は甲山太郎の自己資金で工事会社に全額を支払った。

 

5  土地家屋調査士乙川花子は、甲山太郎からP部分の建物の表題部の登記は変更せずに、Q部分の建物についてのみ増築があったものとして登記してほしいとの相談を受けた。

 

5

甲山太郎が希望する登記=Q部分の建物についてのみ増築として登記→築部分をQ建物の床面積とする建物表変更登記

 

6  前記5の相談を受けた土地家屋調査士乙川花子は、そのような登記申請をすることはできないと考え、適切な登記申請について甲山太郎に説明し了解を得て、その申請手続についての代理並びに当該登記についての必要な調査及び測量の依頼を受けた。

5・6 

甲山太郎が希望する登記=Q部分の建物についてのみ増築として登記→増築部分をQ建物の床面積とする建物表題部変更登記
→[1階間取図]よると、各建物と増築部分の隔壁が除去され、一体利用できる間取りである
→建物表題部変更登記ではなく、「合体による登記等」を申請すべき


7  甲山太郎は、家屋番号302番の建物については甲区1番の所有権の移転の登記に係る登記済証を紛失していたため、これを所持していないが、家屋番号301番の建物については甲区2番の所有権の移転の登記に係る登記識別情報が記載された書面を所持している。

7
所有権の登記がある建物につき合体による登記等を申請する場合、合体に係る建物のいずれか1つの建物の登記識別情報を提供
→家屋番号 301 番の建物の「登記識別情報」が添付情報となる

 

8  土地家屋調査士乙川花子は、現地調査の結果、本件建物は、〔見取図〕のとおり、筆界点 A,B,C, F及びAの各点を順次結んだ直線で囲まれた301番の土地及び筆界点C,D, E,F及びCの各点を順次結んだ直線で囲まれた302番の土地上に建てられており、G,O,M,H, I, N, J, K,L及びGの各点を順次結んだ直線を1階の外壁とし、H, I, N, M及びHの各点を順次結んだ直線を2階の外壁とした建物であることを確認した。
上記各点の座標値は、以下の〔座標一覧表〕のとおりである。
 また、土地家屋調査士乙川花子は、建物の外壁から木造の柱の中心を結ぶ線までは7cmであることを現地で確認した。

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8
一覧表記
載の座標値は,建物の外壁の値
→建物の外壁から木造の柱の中心までは7cm
→各階平面図ではこれを考慮
 

 


9  本件建物の2階部分はQ部分と同型であり、Q部分の表題登記がされた時から何ら変更されていない。

9
合体後の建物=本件建物の2階部分はQ部分と同型

 

10  本件建物の現状は,前記2の増改築工事により、建物全体の屋根がかわらにふき替えられていた。

10 
合体後の建物=本件建物の屋根の種類は,「かわらぶき」

11  土地家屋調査士乙川花子は、家屋番号301番の建物に設定された抵当権の抵当権者である株式会社C銀行に今回行う登記申請について説明し、家屋番号301番の建物に設定された抵当権を存続させ、その権利は本件建物の所有権の10分の2に対してのものであることを承諾する書面を株式会社C銀行から受領した。

11 
抵当権者から承諾書を受領→添付書面欄に「承諾書」と書く
家屋番号301番の建物に設定された抵当権を存続
→その権利は本件建物の所有権の10分の2

 

 

【登記記録の内容】

調查日 平成30年10月10日

1  P部分の敷地の登記記録の抜粋

 (表題部)
所 在  A市B町一丁目
地 番  301番
地 目 宅地
地 積  435.00m2

 (権利部)
甲区 2番  所有権移転  平成29年1月20日受付第567号
   A市B町一丁目1番1号  甲山太郎

乙区  1番  抵当権設定 平成29年1月 20日受付第 568 号
   債務者 甲山太郎
   抵当権者 株式会社C銀行


2  P部分の建物の登記記録の抜粋

 (表題部)
所在  A市B町一丁目 301 番地
家屋番号  301番
種類  居宅
構造  木造スレートぶき平家建
床面積 (省略)

 (権利部)
甲区  2番  所有権移転  平成29年1月20日受付第567号
   A市B町一丁目1番1号  甲山太郎
乙 区  1番  抵当権設定 平成29年1月20日受付第 568 号
   債務者甲山太郎
   抵当権者 株式会社C銀行

3  Q部分の敷地の登記記録の抜粋

 (表題部)
所 在  A市B町一丁目
地 番  302番
地 目  宅 地
地 積  435.00 m2

 (権利部)
甲区  1番 所有権移転  昭和60年3月12日受付第1234号
   A市B町一丁目1番1号  甲山太郎
乙区 (登記事項なし)


4  Q部分の建物の登記記録の抜粋
 (表題部)

所在  A市B町一丁目302 番地
家屋番号  302番
種類  居宅
構造  木造かわらぶき2階建
床面積  1階(省略) 2階 (省略)

 (権利部)
甲区  1番 所有権移転 昭和60年3月12日受付第1234号
   A市B町一丁目1番1号 甲山太郎
乙区 (登記事項なし)

 

別紙2:登記記録の内容 
合体に係る建物の所有権登記名義人は,甲山太郎であり,同一であるが,家屋番号 301 番の建物には抵当権が設定
→この抵当権は、合体後の 301 番の建物に相当する所有権 持分(10 分の2) に存続→同一人(甲山太郎)でないとみなした登記を申請

 

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答案用紙

 

1.問題把握

 

手順①~④により問題把握が完了。
①前文、調査図:「申請人」「対象土地」「申請する登記」を読み取る。
②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。
③問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。この時点で「×:理解できない部分」は読み飛ばす。
④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。

 

・ 合体に係る建物のすべてに所有権が登記されているため,「合体後の建物の表題登記及び合体前の建物の表題部の登記の抹消」を申請
・本件登記は,家屋番号 301 番の建物に抵当権が設定されているため,同一人(甲野太郎)でないとみなした申請人から申請 

2.各階平面図の作図

 

作図メモ:建物の形状の左上を原点としたX座標とY座標の累計の数値をメモ(座標値は建物の外壁であることに注意) 
記載事項:床面積、求積表を記載
床面積の計算:柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積を計算

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3.建物図面の作図 

建物の所在欄→床面積の存する部分が多い 302 番地から記

4.登記申請書 

登記の目的 :合体後の建物の表題登記及び合体前の建物の表題部の登記の抹消
添付情報 :建物図面・各階平面図・所有権証明書・住所証明書・代理権限証書・登記識別情報(所有権の登記がある建物の合体のため)・印鑑証明書(所有権の登記がある建物の合体のため) ・承諾書(家屋番号 301 番の建物に抵当権が設定されているため) 
申請人 :甲山太郎
家屋番号 301 番の建物には抵当権が設定されているため,同一人でないとみなした登記を 申請→申請人欄には,持分と,(あ),(い)等 を記録 
建物の表示 :
・①行目、②行目:従前の登記記録から,建物の登記記録(地番,家屋番号,種類,構造)を転写
登記記録で省略されている床面積は, 計算が必要 
登記原因及びその日付欄:「平成 30 年 10月1日 302 番と合体」,「平成30年10月1日 301 番と合体」 
・③行目:合体後の建物の登記記録(地番,種類,構造,床面積)を記録
登記原因及びその日付欄:合体した年月日「平成30年10月1日 301 番,302 番を合体」
表題登記であるため,合体後の建物の家屋番号の記載しない
・所有作登記特定事項 
所有権の登記がある建物を合体した場合,
所有権の登記を特定するため, 所有権登記特定事項として,当該建物の家屋番号,当該所有権の登記の申請の受付の年月日および受付番号,順位事項並びに登記名義人の氏名または名称を記録しなければならない(令別表 13 項申請情報ロ)
本件登記は,同一人でないとみなしている→登記名義人の氏名欄に、(あ)、(い)等を 付す 
・存統登記特定事項 
合体前の建物に,所有権以外の所有権に関する登記または先取特権,質権 若しくは抵当権に関する登記があり,合体後の建物に存続される場合,
当該合体前の建物の家屋番号,存続登記の目的,申請の受付の年月日および受付番号,順位事項並びに登記名義人の氏名または名称並びに存続登記の目的となる権利を記録しなければならない(令別表 13 項申請情報ハ)。

5.問1(建物表題部変更登記ではなく,合体による登記等を申請した理由)

床面積の増加による建物表題部変更登記ではなく,合体による登記等を申請した理由

(ア)「主従」の関係にない建物二個の間に(イ)「増築工事」を施すことにより,これらを接着させて,その間の(ウ) 「隔壁を除去」し、(エ) 「構造上1個」の建物となったため。

 

6.問2(仮に、Q部分を主である建物で、P部分を附属建物とした場合、【事実関係】2の増改築の工事後に必要となる登記申請)

仮にQ部分が主である建物で, P部分が附属建物であった場合
→主である建物と附属建物が合体
→合体による登記等ではなく,増築と附属建物合体による,「建物表題部変更登記」を申請 
→主である建物についての登記原因及びその日付 「③平成30年10月1日増築, 符号1の附属建物合体」

 

 

解答例

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出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成