H29-22建物書式
次の〔見取図〕のとおり,A市B町三丁目 1 番 1 及び 1 番 2 の土地上には,家屋番号 1番 1 の建物(以下「本件建物」という。)が所在している。本件建物は,主である建物(以下「甲建物」という。)と附属建物符号 1 の建物(以下「乙建物」という。)からなる。
土地家屋調査士法務守は,【事実関係】のとおり,本件建物の所有権の登記名義人であってA市B町三丁目 11 番 1 号を主たる事務所の所在地とする認可地縁団体であるB町自治会の代表者地籍修一から,表示に関する登記に関する相談を受けて事情を聴取し,必要となる全ての表示に関する登記の申請手続についての代理並びに当該登記についての必要な調査及び測量の依頼を受け,【登記記録等の内容】のとおり登記記録等を調査した上,必要となる登記を申請した。
以上に基づき,次の問 1 から問 3 までに答えなさい。
①前文、調査図:「申請人」、「対象建物」、「申請する登記」を読み取る。
・申請人 :認可地縁団体であるB町自治会から依頼
・対象建物 :A市B町三丁目1番1及び1番2の土地上にある、主である建物(甲建物)と附属建物符号1の建物(乙建物)からなる家屋番号1番1の「本件建物」
・申請する登記:不明
問 1 土地家屋調査士法務守が【事実関係】5 の依頼を受けて行うべき本件建物について必要となる表示に関する登記の申請の①登記の目的,②当該登記の申請をする必要がある理由及び③当該登記の申請に各階平面図を添付しなければならないかどうかについて,別紙第 22 問答案用紙の第 1 欄に記載しなさい。
なお,②当該登記の申請をする必要がある理由については,解答欄に記載されている「主である建物のみについて所有権の移転の登記を行うためには,」に続けて,かつ,解答中に「一個の建物」の語句を使用して簡潔に記載しなさい。
③ 問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。まだ「×:理解できない部分」は読み飛ばす。
問1:事実関係5の登記申請書
平成 29 年 4 月 28 日に依頼を受けた登記の目的,申請する理由及び各階平面図を添付するか?
→別紙1事実関係の5に「申請書1」と書く
問 2 別紙第 22 問答案用紙の第 2 欄の空欄を埋めて,土地家屋調査士法務守が【事実関係】10 の依頼を受けて行うべき本件建物について必要となる表示に関する登記の申請書を完成させなさい。ただし,登記の申請は,一の申請情報によって申請するものとし,会社法人等番号は用いないものとする。
問2:事実関係 10 の登記申請書
別紙1の 10 で依頼を受けた登記申請書を書く
登記の申請は一の申請情報によってする
申請人の会社法人等番号は用いない
→作成後 3月以内の登記事項証明書を提供
→第2欄の添付情報に「登記事項証明書」と書く
問 3 別紙第 22 問答案用紙の第 3 欄を用いて,土地家屋調査士法務守が問 2 で完成させた登記の申請書に記載すべき全ての建物について建物図面及び各階平面図を完成させなさい。
問3:事実関係 10の建物図面及び各階平面図の作図
別紙1の 10 で依頼を受けた登記に添付する建物図面及び各階平面図を作図
各階平面図に求積表の記載が不要である旨の記述がない
→床面積だけでなく,求積表も記載
(注)
1 本問における行為は全て適法に行われており,法律上必要な書類は全て適法に作成されているものとする。
2 登記の申請は,書面申請の方法によってするものとする。
3 建物図面は 500 分の 1 の縮尺により,各階平面図は 250 分の 1 の縮尺により,それぞれ作成すること。
4 訂正,加入又は削除をしたときは,訂正は訂正すべき字句に線を引き,近接箇所に訂正後の字句を記載し,加入は加入する部分を明示して行い,削除は削除すべき字句に線を引いて,訂正,加入又は削除をしたことが明確に分かるように記載すること。ただし,押印や字数を記載することは要しない。
②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。
・注1:適法であり書類が揃っている:×
・注2:書面申請:×
・注3:建物図面 500 分の 1 ,各階平面図 250 分の 1 :×
・注4:訂正方法:×
(注)
1 距離の単位はメートルである。
2 ( )内の数字は,土地の地番である。
3 敷地と建物の距離は,土地の筆界線から建物の外壁までの距離である。
4 土地の形状及び建物の形状は,土地の隅切りを除き,直交している。
5 北の方向は,土地の隅切りを除き,道路及び建物に平行又は垂直である。
6 土地の隅切りの形状は,底辺を 2 メートルとする直角二等辺三角形である。
【事実関係】
1 B町自治会は,自己が所有するA市B町三丁目 1 番 2 の土地及び人権岩男から借り受けたA市B町三丁目 1 番 1 の土地上に本件建物を所有している。本件建物のうち甲建物は,B町自治会の構成員の高齢化とともに利用される頻度が減り続け,その構成員の一部から甲建物を所有し続けることについて疑問の声が上がっていた。
(4) 別紙 別紙1:事実関係 1
B町自治会は,本件建物のうち甲建物を所有する必要なし
2 上記 1 の事情を聞いた人権岩男は,B町自治会が存する地域に保育所が不足していたことから,自らが理事長を務めるA市C町二丁目 6 番 2 号を主たる事務所の所在地とする社会福祉法人C福祉会(以下「C福祉会」という。)が保育所を開設するための物件として,C福祉会がB町自治会から,甲建物を買い受けることとした。
(4) 別紙 別紙1:事実関係 2
本件建物のうち主である建物(甲建物)を、C福祉会に売却
3 B町自治会は,総会において,A市B町三丁目 1 番 1 の土地の賃貸借契約を解約すること及びC福祉会に甲建物を売却することを全会一致で決議した。
なお,甲建物の附属建物である乙建物は,B町自治会主催の夏祭りや市民体育祭で使用するテント等が保管されており,C福祉会には売却せず,今後もB町自治会が所有することとしている。
(4) 別紙 別紙1:事実関係 3
主である建物(甲建物)をC福祉会に売却し、附属建物符号1(乙建物) は今後も所有
→甲建物のみの所有権を移転
→甲建物と乙建物の「建物分割登記」を申請
4 B町自治会は,上記 3 の決議に従い,C福祉会との間で,甲建物の売買契約を締結した。
5 土地家屋調査士法務守は,平成 29 年 4 月 28 日,B町自治会の代表者地籍修一から,甲建物を売却することによって本件建物について必要となる表示に関する登記の申請の相談を受け,必要となる表示に関する登記について説明し,その申請手続についての代理並びに当該登記についての必要な調査及び測量の依頼を受けた。
(4) 別紙 別紙1:事実関係 5
主である建物(甲建物)をC福祉会に売却し、附属建物符号1(乙建物) は今後も所有
→甲建物のみの所有権を移転
→甲建物と乙建物の建物分割登記を申請
6 平成 29 年 5 月 19 日,上記 5 の表示に関する登記が完了した。その後,甲建物について,上記 4 の売買契約に基づき代金の支払及び引渡しがされ,平成 29 年 6 月 2 日にB町自治会からC福祉会への所有権の移転の登記が完了した。また,A市B町三丁目 1 番 1 の土地について,乙区 1 番の登記も抹消された。
(4) 別紙 別紙1:事実関係 6
甲建物と乙建物の「建物分割登記」を申請
→その後、分割された甲建物について所有権がC福祉会へ移転
7 C福祉会は,甲建物を保育所として利用するため,甲建物の内装工事を行い,平成 29 年7 月 20 日に内装工事が完了した。また,C福祉会は,甲建物を保育所とする手続を行い,当該手続は適法に完了した。
7
平成 29 年7 月 20 日に保育所への工事が完了
→この日付で甲建物の種類を集会所から保育所へ変更
8 C福祉会は,甲建物の利用を補うために必要となる道具や備品を収納するための倉庫(以下「丙建物」という。)を平成 29 年 8 月 10 日に新築した。丙建物を新築した場所はA市B町三丁目 1 番 1 の土地の北東部分(〔調査図素図〕3 参照)である。
8
平成 29 年 8 月 10 日に丙建物が甲建物と同一敷地上(1番1の土地上)に新築
→この日付で附属建物の新築による登記を申請
附属建物の符号は再使用できない(「符号1」は使用済)
→丙建物は附属建物「符号2」
9 丙建物は,発泡ポリスチレン板を主たる構成材料とし,壁部分と屋根部分が一体となったアーチ形状(かまぼこ形状)となっている。なお,床面から天井までの高さは 1.5 m 以上である(〔調査図素図〕3 参照)。
9
発泡ポリスチレン板を主な構成材料とし,接着剤とボルトで接合したドーム型の構造物
→構造は「発泡ポリスチレン造」
壁部分と屋根部分が一体となったドーム型
→屋根部分なしの構造→「発泡ポリスチレン造平家建」
10 土地家屋調査士法務守は,C福祉会の代表者である理事長人権岩男から,甲建物及び丙建物に関する登記の相談を受け,必要となる全ての表示に関する登記について説明し,その申請手続についての代理並びに当該登記についての必要な調査及び測量の依頼を受けた。
10
C福祉会が申請人
甲建物の種類変更と,甲建物の附属建物新築(丙建物の新築)を、一の申請で建物表題部変更登記として申請
【登記記録等の内容】
調査日 平成 29 年 4 月 28 日
1 本件建物の敷地の登記記録の抜粋
(表題部)
所 在 A市B町三丁目
地 番 1 番 1
地 目 宅地
地 積 1417.00 m2
(権利部)
甲 区 1 番 A市B町三丁目 3 番 1 号 人権岩男
乙 区 1 番 賃借権設定 A市B町三丁目 11 番 1 号 B町自治会
(表題部)
所 在 A市B町三丁目
地 番 1 番 2
地 目 宅地
地 積 179.00 m2
(権利部)
甲 区 1 番 A市B町三丁目 11 番 1 号 B町自治会
乙 区 (登記事項なし)
別紙2:資料調査結果
1 敷地の登記記録
建物分割登記により、甲建物の所在が変更する
2 本件建物の登記記録の抜粋
(表題部)
所 在 A市B町三丁目 1 番地 1 , 1 番地 2
家屋番号 1 番 1
主である建物 種 類 集会所
構 造 軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板ぶき平家建
床面積 185.27 m2
附属建物符号 1 種 類 倉庫
構 造 軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板ぶき平家建
床面積 79.49 m2
原因及びその日付 平成 17 年 10 月 1 日新築
(権利部)
甲 区 1 番 A市B町三丁目 11 番 1 号 B町自治会
乙 区 (登記事項なし)
2 本件建物の登記記録
事実関係5の建物分割登記
→事実関係 10 の建物表題部変更登記の際、甲建物の所在は変更後の所在になる
(注)
1 距離の単位はメートルである。
2 ( )内の数字は,土地の地番である。
3 敷地と建物の距離は,土地の筆界線から建物の外壁までの距離である。
4 建物の測定値は,軽量鉄骨の柱の中心又は発泡ポリスチレン板の中心である。
5 建物の隅角部は全て直角である。
6 立面図と平面図では縮尺が異なる。
答案用紙
1.問題把握
手順①~④により問題把握が完了。
①前文、調査図:「申請人」「対象土地」「申請する登記」を読み取る。
②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。
③問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。この時点で「×:理解できない部分」は読み飛ばす。
④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。
申請する登記:
・甲建物と乙建物を分割する「建物分割登記」を申請
・甲建物の所有権移転後、甲建物の種類変更と,丙建物の附属建物新築について一の申請による「建物表題部変更登記」を申請
2.各階平面図の作図
・作図メモ:建物の形状の左上を原点としたX座標とY座標の累計の数値をメモ
・記載事項:床面積、求積表を記載。丙建物の附属建物の符号は「符号2」となる
・床面積の計算:柱の中心線で囲まれた部分又は発泡ポリスチレン板の中心で囲まれた部分の水平投影面積を計算
3.建物図面の作図
甲建物の形状を書く→土地の形状を書く→丙建物を書き足す
4.登記申請書
1建物分割登記
登記の目的 :建物分割登記
・当該登記の申請をする必要がある理由
一不動産一登記記録の原則により,建物の一部のみの所有権移転登記はできない
→甲建物のみの所有権を移転するために甲建物と乙建物の建物分割登記を申請
→「主である建物のみについて所有権の移転の登記を行うためには,主である建物である甲建物と, 附属建物である乙建物を、登記記録上別々の一個の建物にする必要があるため,甲建物から乙建物を分割する。」
・当該登記の申請に各階平面図を添付しなければならないかどうか
建物分割登記→当該登記の申請に各階平面図を添付しなければならない
2 建物表題部变更登記
登記の目的 :建物表題部変更登記
添付情報 :建物図面・各階平面図・所有権証明書(丙建物について)・代理権限証書・登記事項証明書(申請人が会社法人等番号を有する社会福祉法人であるが, 提供しない→作成後3月以内の登記事項証明書を添付)
申請人 :A市C町二丁目6番2号 社会福祉法人C福祉会人
権岩雄の肩書きも事実関係2のとおり理事長とする
建物の表示 :建物分割登記を経て,建物の所在がA市B町三丁目1番地1に変更されている
①行目:従前の登記記録から,主である建物の表示,家屋番号,種類,構 造,床面積を転写
②行目:変更後の種類を「保育所」と記載
登記原因及びその日付:保育所への工事が完了した日付「①29 年7 月 20 日種類変更」
③行目:新築した附属建物→符号2
構造:「発泡ポリスチレン造平家建」
登記原因及びその日付:丙建物の新築工事が完了した日付「平成 29 年 8 月 10 日新築」
解答