H29-2不動産の物権変動
次の対話は、不動産の物権変動に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アイ 2 アウ 3 イオ 4 ウエ 5 エオ
教授:A所有の土地をBがCに売却し、その後BがAから当該土地を買い受けた場合において、いずれの売買契約において、いずれの売買契約にも所有権の移転時期や方法に関する特約がないときは、当該土地の所有権は、いつの時点でCに移転しますか。
学生:ア BがAから当該土地を買い受け、かつ、AからBへの所有権の移転の登記がされた時点で、Cに当該土地の所有権が移転することになります。
×
他人の権利を売買の目的としたときは、売主は,その権利を取得して買主に移転する義務を負うため、(民法561条)
他人物売買は有効であるが、(最判昭25.10.26)
Cに当該土地の所有権が移転する時期は、BがAから当該土地を買い受け、(AからBへの所有権の移転の登記がされる前であっても)、目的物の処分権を取得したときとなる(大判大8.7.5)。
教授:Cが占有しているA所有の土地をAがBに売却し、AからBへの所有権の移転の登記がされた後、Cにつき当該土地の取得時効が完成して、Cが時効を援用した場合、CはBに対し、登記なくして当該土地の所有権を主張することかできますか。
学生:イ はい。 Cは、Bに対し、当該土地の所有権を主張することができます。
○
A所有の不動産をCが占有して時効期間が進行中に、当該不動産がAからBに譲渡された後、Cの時効が完成した場合、
Cは、B所有の不動産を時効取得したものとして、BとCは,物権変動の当事者類似の関係に立つため、Cは、民法177条の「第三者」にはあたらない。
よって、Cは,登記なくして,時効取得をBに対抗することができる(最判昭41.11.22)。
教授:A所有の土地をAがBに売却し、AからBへの所有権の移転の登記がされた後、Aが、Bの債務不履行により、当該売買契約を解除しました。しかし、その解除後、BがCに当該土地を売却し、BからCへの所有権の移転の登記がされた場合、Aは、Cに対し、登記なくして当該土地の所有権を主張することができますか。
学生:ウ はい。 AはCに対し、当該土地の所有権を主張することができます。
×
AB間の契約が解除された後に、Cが不動産の所有権を取得した場合、
取消し後の第三者の場合と同様、B→A, B→Cの二重譲渡があったものと考えられ、AC間は対抗関係にあるといえる。
したがって,Aは、登記なくして所有権の移転をCに対抗することができない。
教授:A所有の土地をAがBに売却したが、AからBへの所有権の移転の登記がされる前に、Cが権原なく当該土地の占有を開始した場合、BはCに対し、登記なくして当該土地の所有権を主張することができますか。
学生:エ はい。 Bは、Cに対し、当該土地の所有権を主張することができます。
○
不動産に関する物権の得喪・変更は、登記をしないと「第三者」に対抗することができない。(民法177条)
この「第三者」とは,当事者もしくはその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう(大連判明 41.12.15)。
不法占拠者は、「第三者」にあたらない(大判昭 2.2.21)。
教授:A所有の土地をAがBに売却した後、AからBへ所有権の移転の登記がされる前に、Bからその登記の申請を受託していたCが、Aから当該土地を買い受け、AからCへの所有権の移転の登記がされた場合、BはCに対し、登記なくして当該土地の所有権を主張することができますか。
学生:オ はい。 BはCに対し、当該土地の所有権を主張することができます。
○
不動産に関する物権の得喪・変更は、登記をしないと「第三者」に対抗することができない。(民法177条)
この「第三者」とは,当事者もしくはその包括承継人以外の者で登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう(大連判明 41.12.15)。
本肢のような他人のために登記を申請する義務のある者は、「第三者」に あたらない(法5条2項)。