H28-21土地書式
土地家屋調査士法務民子は,甲野太郎から,次の〔調査素図〕に示すA市B町一丁目31 番2の土地(以下「甲土地」という。),32 番1の土地(以下「乙土地」という。),40 番1の土地(以下「丙土地」という。),40 番2の土地(以下「丁土地」という。)及び無番地の土地B,C,D,E,F,G及びBの各点を順次直線で結んだ部分。(以下「戊土地」という。)の登記に関する相談を受け,【土地家屋調査士法務民子の聴取記録の概要】のとおり事情を聴取し,必要な表示に関する登記の申請手続等の代理について依頼を受け,【土地家屋調査士法務民子による調査及び測量の結果の概要】のとおり必要な調査や測量を行った。
以上に基づき,次の問1から問4までに答えなさい。
〔調査素図〕
(注)
〔調査素図〕中,A点からI点までの各点は,筆界点の位置を示す。J点は,A点とB点を結ぶ直線と平行なG点を通る直線と,A点とI点を結んだ直線上の交点である。
実線は,筆界を示す。C点とF点を結んだ点線及びG点とJ点を結んだ点線は,土地の分割線を示す。
A101 点とA102 点はA市基準点を示す。
①前文、調査図素図:「申請人」、「対象土地」、「申請する登記」を読み取る。
・申請人:甲野太郎
・対象土地:A市B町一丁目 31 番2(=甲土地), 32番1 (=乙土地),40番1(=丙土地), 40番2(=丁土地)及び無番地(=戊土地)の5筆
→調査素図に、「甲~戊土地」をそれぞれ書き込む
・申請する登記:不明
問1 土地家屋調査士法務民子の測量結果からD点及びJ点の座標値を求め,別紙第21 問答案用紙の第1欄に記載しなさい。
③ 問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。この時点で「×:理解できない部分」は読み飛ばす。
・問1:測量 ○
D点とJ点の座標値を求める→答案構成用紙に点名を書く
問2 戊土地について必要となる登記は何か,また,その申請を一の申請情報によって申請することができるか否か及びその理由について,「地目」,「取得原因」及び「登記原因」の語句を使用して,別紙第 21 問答案用紙の第欄に記載しなさい。
・問2:戊土地について必要となる登記内容
一の申請情報によってすることができるか否か及びその理由
問3 別紙第 21 問答案用紙の第3欄の登記申請書の空欄を埋めて,丁土地の登記の申請書を完成させなさい。ただし,地積は測量の結果である座標値を用いて座標法により求積するものとする。
・問3:丁土地の登記申請書 ×
問4 別紙第 21 問答案用紙の第欄を用いて,問3の登記の申請書に添付する地積測量図を完成させなさい。
・問4:丁土地の地積測量図の作図 ×
戊土地の登記と,丁土地の登記申請書・地積測量図が求められている
(注)
1 本問における行為は全て適法に行われており,法律上必要な書類は全て適法に作成されているものとする。
2 登記の申請は,書面申請の方法によってするものとする。
3 座標値は,計算結果の小数点以下第3位を四捨五入し,小数点以下第2位までとすること。
4 地積測量図には,今回の測量成果である座標値から求めた筆界点間の辺長を,計算結果の小数点以下第3位を四捨五入し,小数点以下第2位までを記載すること。
5 各筆界点の座標値,平面直角座標系の番号又は記号,地積及びその求積方法並びに測量年月日は,記載することを要しない。
6 A市基準点の各点は,地積測量図にその地点を明示して点名を付して記載することとし,座標値を記載することを要しない。
7 A市基準点成果表を用いて行う測量においては,距離に関する補正計算は行わないものとする。
8 解答に当たって関数の値が必要となる場合には,次の【三角関数真数表】の値を用いること。
9 訂正,加入又は削除をしたときは,訂正は訂正すべき字句に線を引き,近接箇所に訂正後の字句を記載し,加入は加入する部分を明示して行い,削除は削除すべき字句に線を引いて,訂正,加入又は削除をしたことが明確に分かるように記載すること。
・注1:適法であり書類が揃っている:×
・注2:書面申請:×
・注3:辺長は小数点以下3位を四捨五入:×
・注4:座標値は小数点以下3位を四捨五入:×
・注5:地積測量図の記載事項:○地積測量図に不動産登記規則 77 条等による事項を記録する。
1 地番区域の名称
2 方位
3 縮尺
4 地番(隣接地の地番を含む。)
5 筆界点の座標値と地積及びその求積方法
6 筆界点間の距離(単位の表示も含む。)
7 平面直角座標系の番号又は記号
8 筆界点の名称及び種類
9 基本三角点等の名称及び座標値
10 測量の年月日
11 申請人の記名
12 作成者の署名又は記名押印(調査士が作成者の場合は職名と職印)
13 分筆後の土地の符号
14 作成年月日
本問では、5 筆界点の座標値と地積及びその求積方法、7 平面直角座標系の番号又は記号、10 測量の年月日は、記載を要しない。
8 筆界点の名称及び種類、6 筆界点間の距離と単位の表示は、記載する。
・注6:基準点の記載:○本問では、9 基本三角点等の名称及び座標値は不要であるが、地積測量図中に基準点をプロットし、名称を付す。
・注7:距離の補正は不要 :×
・注8:三角関数表 :×
・注9:訂正方法 :×
【三角関数真数表】
【土地家屋調査士法務民子の聴取記録の概要】
1 甲野太郎は,甲土地をさつまいも畑,乙土地をいちご狩り用のいちご栽培農園,丁土地をぶどう狩り用のぶどう栽培農園として利用している。
④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。
別紙1: 【土地家屋調査士法務民子の聴取記録の概要】
甲土地をさつまいも畑,乙土地をいちご狩り用のいちご栽培農園,丁土地をぶどう狩り用のぶどう栽培農園
→地目は「畑」として認定
2 甲野太郎は,近い将来乙土地のいちご栽培農園を拡張するため,丁土地を(イ)部分と(ロ)部分に分割して,(イ)部分をぶどう栽培農園に,(ロ)部分をいちご栽培農園にしたい意向を示している。また,(ロ)部分は乙土地に合筆して,これを担保にいちご栽培農園拡張のための融資を受ける予定である。
・丁土地を(イ)(ロ)部分に分割し,(ロ)部分を乙土地に合筆し、これを担保に融資を受ける予定
→丁土地と乙土地の土地につき,「土地分合筆登記」
→合筆制限があるか、これ以降の記述で読み取る
3 甲野太郎は,丙土地と戊土地の(ニ)部分に永続性のない小屋をそれぞれに設けて,農園及び物産直販売の受付所並びに農具置場として一体利用している。
・丙土地と戊土地(ニ)部分に、永続性がない小屋があり、農園,受付所,農具置場として一体利用
→小屋があるが、この部分の主目的は農園
→地目は「畑」として認定
4 甲野太郎は,31 番1の土地上にある居宅に居住しており,戊土地の(ハ)部分には居宅の附属建物となる物置を建てて,一体利用している。
・戊土地(ハ)部分は 31 番1にある居宅と一体利用
→戊土地(ハ)部分の地目は「宅地」として認定
・3と4から,無番地である戊土地の(二)部分は「畑」で、(ハ)部分は「宅地」と認定
→1つの土地に複数の地目は認められない
→戊土地は畑部分と宅地部分の2筆で構成される
5 甲野太郎は,戊土地の(ニ)部分を時効取得,(ハ)部分を売払いの手続によって,財務省から所有権を取得済みであるが,関係する登記は一切されていない。
・戊土地の(二)部分、(ハ)部分は所有権取得済みだが、未登記
→戊土地について「土地表題登記」を申請
6 甲野太郎は,登録免許税額が最も少なくなる方法によって登記を申請することを希望している。
・登録免許税額を最も少なく
→丁土地を2筆に分筆(2,000円)し、乙土地に合筆 (1,000 円)するのではなく、丁土地と乙土地について分合筆登記(2,000円)を申請
・問3では「丁土地の登記の申請書」とあるが、分合筆登記は「丁土地と乙土地の登記の申請書」となる
→合筆せずに分筆しても、申請人の目的である融資を受けることが可能(分筆した(ロ)部分と乙土地を共同担保として抵当権設定)
→2より「合筆して」融資を受ける
→登録免許税額が最少である丁土地と乙土地の「土地分合筆登記」を申請
【土地家屋調査士法務民子による調査及び測量の結果の概要】
1 資料に関する調査の結果
⑴ 登記記録に関する調査の結果
(表題部)
所在 A市B町一丁目
地番 31 番
地目 宅地
地積 528.45 m2
(権利部)
甲 区 順位番 所有権移転
A市B町一丁目 16 番号 甲野太郎
乙 区 なし
(表題部)
所在 A市B町一丁目
地番 31 番
地目 畑
地積 271 m2
(権利部)
甲 区 順位番 所有権移転
A市B町一丁目 16 番号 甲野太郎
乙 区 なし
(表題部)
所在 A市B町一丁目
地番 32 番
地目 畑
地積 351 m2
(権利部)
甲 区 順位番 所有権移転
A市B町一丁目 16 番号 甲野太郎
乙 区 なし
(表題部)
所在 A市B町一丁目
地番 40 番
地目 雑種地
地積 268 m2
(権利部)
甲 区 順位 番 所有権移転
A市B町一丁目 16 番号 甲野太郎
乙 区 なし
(表題部)
所在 A市B町一丁目
地番 40 番
地目 畑
地積 276 m2
(権利部)
甲 区 順位 番 所有権移転
A市B町一丁目 16 番号 甲野太郎
乙 区 なし
④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。
別紙 2-1:資料に関する調査の結果
・丁土地と乙土地の分合筆登記を申請する上での合筆制限があるか否かを読み取る
→以下の土地は合筆することができない
1 相互に接続していない土地
2 所有者や土地の表示が異なる土地
3 所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地
→40番2(丁土地)と 32番1 (乙土地)の登記記録から,相互に接続しており,地目と甲区所有者が同一,乙区権利に関する登記がない
→合筆制限に当たらず,分合筆登記を申請できる
⑵ 地図等に関する調査の結果
甲土地,乙土地,丙土地,丁土地及び戊土地の地域には,不動産登記法第 14 条第1項の地図は備え付けられておらず,同条第4項の地図に準ずる図面が備え付けられている。
また,近傍類似の土地についての地図の縮尺は,500 分の1であった。
・戊土地の近傍類似の土地についての地図の縮尺は 500 分の1
→戊土地の土地表題登記に添付する土地所在図は、縮尺 500 分の1となる(本問では問われず)
⑶ 地図等に関する調査の結果
ア 乙土地及び丙土地については,地積測量図が備え付けられているが,地積及び筆界点間の距離は,地積測量図と一致していることを確認した。
イ 丁土地については地積測量図が備え付けられていないが,地積は,公差の範囲内であることを確認した。
・A101 点とA102 点の座標が記載
→次の別紙 2-2 :(4)測量の結果においても、A市基準点であるA101 点とA102 点を使用
→この地積測量図に記載された座標値が、そのまま対象土地各点の座標値となる
→32番1の地積測量図のK5=A 点、K4=B点となる
→40番1の地積測量図の①=G点、④=H点となる
・丁土地については地積が公差の範囲内であることが確認
→地積更正の必要なし
⑷ A市における公共基準点の調査の結果
A市において,公共基準点の調査を行った結果,各基準点の状態は正常であり,世界測地系の承認を受けていることを確認した。
⑸ A市道路管理課における道路境界の調査の結果
A市道路管理課において,道路境界の調査を行った結果,丙土地,丁土地及び戊土地については道路境界の確定がされていた。
また,今回の測量の結果とA市備付道路境界図が一致していることを確認した。
⑹ 戊土地に関する調査の結果
戊土地を管轄する財務局において,戊土地に関する調査をした結果,戊土地は元来無番地であった。
・戊土地は元来無番地
→土地表題登記を申請
2 甲土地,乙土地,丙土地,丁土地及び戊土地の利用状況,境界標の状況並びに立会及び測量の結果
⑴ 甲土地,乙土地,丙土地,丁土地及び戊土地の利用状況
各土地の利用状況は,【土地家屋調査士法務民子の聴取記録の概要】のとおりである。
なお,各土地の周辺地域は市街地地域に該当する。
⑵ 境界標の状況に関する調査
A点からG点までの各点にはコンクリート杭が設置されており,H点及びI点には金属標が設置されている。
④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。
別紙 2-2 : 現況の調査結果
・境界標の種類→地積測量図の作図に使用
⑶ 立会い等
ア A市道路管理課職員及び戊土地を管轄する財務局職員から,道路及び無地番の土地
について,それぞれ境界の確認が得られた。
イ 隣接地の所有者と既存の境界標を確認したところ,問題は認められなかったので,
J点にコンクリート杭を設置した。
・境界標の種類→地積測量図の作図に使用
⑷ 測量の結果
ア A市基準点であるA101 点とA102 点及び関連する基準点の点検測量を行った結果,許容誤差内にあることを確認した。そこで,〔A市基準点成果表〕の値をもって,筆界点の観測を行い,次のとおり観測値と筆界点の座標値を得た。
(ア) 〔A市基準点成果表〕
(イ)〔測量によって得られた観測値〕
器械点をA102 としたときの観測値
(ウ)〔測量によって得られた座標値〕
(注)
1 観測角は,右回りの角度を示す。
2 北は,X軸正方向に一致する。
・A市基準点成果表
→既存地積測量図のA101 点とA102 点の座標と同一であることを確認
→既存地積測量図と、この測量の結果の座標系は同一である
・D点は、A101 と A102 の放射計算により求める
答案用紙
解説
1.問題把握
手順①~④により問題把握が完了。
①前文、調査図素図:「申請人」「対象土地」「申請する登記」を読み取る。
②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。
③問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。この時点で「×:理解できない部分」は読み飛ばす。
④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。
・申請人:甲野太郎
・申請する登記:
丁土地と乙土地の土地分合筆登記(合筆制限にあたらないことを確認済)
→分合筆登記についての地積測量図を作図
戊土地については土地表題登記を申請するが、(ハ) (ニ) 部分で地目が異なる
→各部分2筆の土地につき表題登記をする
解答例