H28-15建物の合体による登記等
合体後の建物について建物の表題登記及び合体前の建物についての建物の表題部の登記の抹消(以下「合体による登記等」と総称する。)に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アウ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 エオ
ア 表題登記がない甲建物と所有権の登記がある乙建物が合体した後に合体前の乙建物の所有権の登記名義人となった者は、その者に係る所有権の登記があった日から1か月以内に、合体による登記等を申請しなければならない。
○
二以上の建物が合体して一個の建物となった後に、合体前の表題登記がある建物の表題部所有者又は合体前の所有権の登記がある建物の所有権の登記名義人となった者は、
その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に、合体による登記等を申請しなければならない。
よって、本肢の合体前の所有権の登記がある建物の所有権の登記名義人となった者は, その者に係る所有権の登記があった日から1月以内に建物の合体による登記等を申請しなければならない(法49条4項)。
イ 所有権の登記名義人が同一である建物が合体し、合体前の各建物につき存していた抵当権の登記が合体後の建物に存続すべきものである場合において、当該抵当権の登記の目的、申請の受付年月日及び受付番号、登記原因及びその日付並びに登記名義人がいずれも同一であるときは、合体前の各建物の所有権の登記名義人が同一でないとみなした場合の持分を合体による登記等の申請情報の内容とすることを要しない。
○
合体前の建物についてされた所有権の登記以外の所有権に関する登記又は先取特権、質権若しくは抵当権に関する登記であって、合体後の建物について存続するものを「存続登記」といい、
合体による登記等を申請する場合において、この「存続登記」があるときは、それに関する事項を申請情報の内容とする。
合体による登記等の申請において、「存続登記」がある建物の所有権の登記名義人が、合体前の所有権の登記がある他の建物の所有権の登記名義人と同一の者であるときは、これらの者が同一の者でないものとみなした場合における持分を申請情報の内容とする。(令別表13項・申請情報欄ニ)
ただし、二以上の存続登記がある場合において、当該二以上の存続登記の登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号、登記原因及びその日付並びに登記名義人がいずれも同一であるときの当該二以上の存続登記の目的である所有権の登記名義人に係る持分は、
合体による登記等の申請情報の内容とすることを要しない。
よって、本肢のいずれも同一の抵当権の場合は、所有者が同一でないとみなした場合における持分を申請情報の内容とすることを要しない。
令別表13項
十三
登記:合体による登記等(法第四十九条第一項後段の規定により併せて申請をする所有権の登記があるときは、これを含む。)申請情報:
ニ 存続登記がある建物の所有権の登記名義人が次に掲げる者と同一の者であるときは、これらの者が同一の者でないものとみなした場合における持分
(二以上の存続登記がある場合において、当該二以上の存続登記の登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号、登記原因及びその日付並びに登記名義人がいずれも同一であるときの当該二以上の存続登記の目的である所有権の登記名義人に係る持分を除く。)
(1) 合体前の表題登記がない他の建物の所有者
(2) 合体前の表題登記がある他の建物(所有権の登記がある建物を除く。)の表題部所有者
(3) 合体前の所有権の登記がある他の建物の所有権の登記名義人
ウ Aが所有者である表題登記がない甲建物とBが表題部所有者である乙建物が合体した場合において、合体による登記等の申請は、A又はBが単独で申請することができる。
○
建物の合体による登記等は報告的登記であるため、保存行為として共有者の1人や相続人の1人から申請することができ、(民法252条ただし書、法49条1項1号)
合体前の建物の所有者等が異なる場合には、そのいずれかの者からすることもできる。(平5.7.30 民三5320号第六・二・(1))
法49条1項1号
(合体による登記等の申請)
第四十九条 二以上の建物が合体して一個の建物となった場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める者は、当該合体の日から一月以内に、合体後の建物についての建物の表題登記及び合体前の建物についての建物の表題部の登記の抹消(以下「合体による登記等」と総称する。)を申請しなければならない。この場合において、
第二号に掲げる場合にあっては当該表題登記がない建物の所有者、
第四号に掲げる場合にあっては当該表題登記がある建物(所有権の登記がある建物を除く。以下この条において同じ。)の表題部所有者、
第六号に掲げる場合にあっては当該表題登記がない建物の所有者及び当該表題登記がある建物の表題部所有者
をそれぞれ当該合体後の建物の登記名義人とする所有権の登記を併せて申請しなければならない。
一 合体前の二以上の建物が表題登記がない建物及び表題登記がある建物のみであるとき。 当該表題登記がない建物の所有者又は当該表題登記がある建物の表題部所有者
平5.7.30 民三5320号第六・二・(1)
第六 建物が合体した場合の登記手続の新設
二 登記の申請
(1)建物の合体があった場合における登記の申請は、合体前の建物が未登記であるときはその所有者から、合体前の建物につき表示の登記のみがされているときは表題部に記載された所有者から、合体前の建物につき権利の登記がされているときは所有権の登記名義人から、建物の合体後1か月以内に、合体による建物の表示の登記及び合体前の建物の表示の登記の抹消につき同一の申請書をもってすることを要する(法第93条の4の2第1項前段)。
この登記の申請は、合体前の建物の所有者等が異なる場合には、そのいずれかの者からすることもできる。
エ 表題登記がある甲建物と所有権の登記がある乙建物が合体し、合体による登記等の申請がされた場合において、合体前の乙建物に賃借権の登記がされているときは、当該賃借権の登記を合体後の建物の登記記録の権利部の相当区に移記しなければならない。
×
合体前の建物についてされた所有権以外の所有権に関する登記または先取特権,質権若しくは抵当権に関する登記については、合体後の建物の持分上に移記され存続(存続登記)することになる (規則120条4項)。
これら存続する登記は持分上に認められる権利に限られるため,賃借権などの持分上に登記することができない権利は、存続登記となり得ないので、合体により移記できない(平5.7.30 民三 5320号)。
平5.7.30 民三5320号第六・五・(5)
第六 建物が合体した場合の登記手続の新設
五 合体による建物の表示の登記
(5)合体前の建物についての賃借権の登記は、合体後の建物の登記用紙に移記することを要しない。
オ 主たる建物とその附属建物が合体した場合は、合体による登記等を申請しなければならない。
×
合体による登記等は、登記記録上別個の2以上の建物が合体して1個の建物となった場合に申請する登記である。
主である建物とその附属建物を合体した場合や,附属建物と附属建物を合体した場合、建物の個数は変わらず、主である建物の床面積変更登記のように扱われるため、建物の表題部の変更の登記をする (平 5.7.30 民三 5320号、準則 95条)。
よって、主たる建物とその附属建物が合体した場合は、合体による登記等の申請ではなく、建物の表題部の変更の登記を申請しなければならない。
法49条1項
(合体による登記等の申請)
第四十九条 二以上の建物が合体して一個の建物となった場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める者は、当該合体の日から一月以内に、合体後の建物についての建物の表題登記及び合体前の建物についての建物の表題部の登記の抹消(以下「合体による登記等」と総称する。)を申請しなければならない。
平5.7.30 民三5320号第六・十
第六 建物が合体した場合の登記手続の新設
十 附属建物の合体に係る登記
上記一から九までの手続は、2個以上の建物が合体した場合に関するものであって(法第93条の4の2第1項参照)、主たる建物と附属建物とが合体した場合又は附属建物と附属建物とが合体した場合には、適用がない。この場合には、準則第162条の手続をするものとする。なお、この場合の登記原因の記載は、「合棟」から「合体」に改められた。
法51条1項
(建物の表題部の変更の登記)
第五十一条 第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
準則95条
(合体による変更の登記の記録方法)
主たる建物と附属建物の合体による建物の表題部の登記事項に関する変更の登記をする場合において,
表題部に登記原因及びその日付を記録するときは,
主たる建物の床面積の変更については,原因及びその日付欄に,登記原因及びその日付の記録に床面積欄の番号を冠記して,「③平成何年何月何日附属建物合体(又は「増築及び附属建物合体」)」のように記録し,
附属建物の表題部の抹消については,「平成何年何月何日主たる建物に合体」と記録しなければならない。
2以上の附属建物の合体による建物の表題部の登記事項に関する変更の登記をする場合についても,同様とする。