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H27-22建物書式

第22問  次の〔見取図〕のとおり,A市B町二丁目 5 番 27 の土地には,家屋番号 5 番 27 の建物(以下「本件建物」という。)が所在している。
 土地家屋調査士民事花子は,(別紙 1 )の【事実関係】のとおり,本件建物の所有権の登記名義人である乙山一郎から,登記に関する相談を受けて事情を聴取し,必要となる全ての表示に関する登記の申請手続についての代理並びに当該登記についての必要な調査及び測量の依頼を受け,(別紙 2 )の【登記記録等の内容】のとおり,登記記録等を調査した上,必要となる登記を申請した。
 以上に基づき,次の問 1 から問 3 までに答えなさい。

 

①前文、調査図:「申請人」、「対象建物」、「申請する登記」を読み取る。

・申請人 :乙山一郎
・対象建物 :A市B町二丁目 5 番 27 の本件土地にある家屋番号 5 番 27 の本件建物
・申請する登記:不明

 

 

問 1  土地家屋調査士民事花子は,乙山一郎から,本件建物のうち,共同住宅部分の所有権のみを会社に譲渡して所有権の移転の登記をし,居宅部分及びその敷地である土地の所有権は全て自己名義のままにしておきたいという希望を受け,登記申請に際して必要な手続について,乙山一郎に教示した。その内容について,区分建物とその敷地に関する建物の区分所有等に関する法律上の原則を踏まえつつ,別紙第22 問答案用紙の第 1 欄に簡潔に記載しなさい。

③ 問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。まだ「×:理解できない部分」は読み飛ばす。

問1:本件建物の一部のみ所有権移転登記をするために必要な登記申請に際して、区分建物とその敷地に関する原則を踏まえた教示:×

 

問 2  土地家屋調査士民事花子が平成 27 年 8 月 21 日に申請した(イ)居宅部分及び(ロ)共同住宅部分に関する登記の申請書を,別紙第 22 問の答案用紙の第 2 欄の空欄を埋めて完成させなさい。
 なお,敷地権の表示に関する登記の申請が不要である場合は,「原因及びその日付」の欄に,「記載不要」と記載すること。

問2:登記申請書 :×平成27年10月21日に申請した登記申請書

 

問 3  別紙第 22 問答案用紙の第 3 欄を用いて,土地家屋調査士民事花子が平成 27 年 8月 21 日に申請した登記の申請書に添付する(イ)居宅部分に関する建物図面及び各階平面図を完成させなさい。
 なお,各階平面図には,求積方法及び床面積の記載を要しない。

問3:建物図面及び各階平面図の作図:×平成27年 10月 21 日に申請した登記に添付(各階平面図は求積表・床面積の記載は不要) 

 

(注)

1 本問における行為は全て適法に行われており,法律上必要な書類は全て適法に作成されているものとする。
2 登記の申請は,書面申請の方法によってするものとする。
3 建物図面は 500 分の 1 の縮尺により,各階平面図は 250 分の 1 の縮尺により,それぞれ作成すること。
4 訂正,加入又は削除をしたときは,訂正は訂正すべき字句に線を引き,近接箇所に訂正後の字句を記載し,加入は加入する部分を明示して行い,削除は削除すべき字句に線を引いて,訂正,加入又は削除をしたことが明確に分かるように記載すること。

②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。
・注1:適法であり書類が揃っている:×
・注2:書面申請:×
・注3:建物図面 500 分の 1 ,各階平面図 250 分の 1 :×
・注4:訂正方法:×

 

〔見取図〕

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(注)
1 距離の単位は,メートルである。
2 ( )内の数字は,土地の地番である。
3 敷地と建物の距離は,土地の筆界線から建物の外壁までの距離である。
4 土地の形状及び建物の形状は,全て直交している。
5 北の方向は,道路の方向と一致している。

 

 

(別紙 1 )

【事実関係】

1 本件建物は,乙山一郎が自ら所有するA市B町二丁目 5 番 27 の土地に平成 26 年5月1日に建築した 3 階建ての建物であり,1 階に共同住宅部分( 2 部屋)及び居宅部分専用玄関が,2 階及び 3 階に自身が居住する居宅部分が,それぞれ配置されている。

④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。

(4) 別紙 
別紙1 :事実関係 
本件建物の1階が共同住宅, 2階及び3階が居宅として利用。
1階に居宅の玄関がある。 

2 本件建物の所有権の登記名義人である乙山一郎は,本件建物以外にも,自身を所有権の登記名義人とする共同住宅を数棟所有している。乙山一郎は,今後も更に数棟の共同住宅の建築を検討しており,棟数も多くなってくることから,会社を設立して,その会社に全ての共同住宅の所有権を譲渡し,所有権の移転の登記をすることにした。

3 本件建物については,居宅部分と共同住宅部分とが一棟の建物として登記されていることから,共同住宅部分の所有権の移転の登記を申請する前提として,本件建物のうち,居宅部分と共同住宅部分とを別個の建物とするための登記をする必要がある。

2,3
共同住宅部分の所有権を移転する前提として,本建物の共同住宅部分と居宅部分とを別個の建物とする→区分す登記を申請 

4 また,乙山一郎は,本件建物のうち,共同住宅部分の所有権のみを会社に譲渡して所有権の移転の登記をし,居宅部分及びその敷地である土地の所有権は全て自己名義のままにしておくことを希望している。

4
共同住宅部分の所有権のみを会社に移転し、居宅部分と敷地の有権は移転しない。 

5 乙山一郎は,土地家屋調査士民事花子に対し,本件建物の居宅部分と共同住宅部分とを別個の建物とするために必要な表示に関する登記の申請手続を依頼することにした。

6 土地家屋調査士民事花子は,本件建物に関する調査及び測量を実施し,本件建物の居宅部分と共同住宅部分とが,構造上及び利用上において明確に区分されていることを確認するとともに,必要な書類の提供を受け,平成 27 年 8 月 21 日,本件建物のうち,居宅部分と共同住宅部分とを別個の建物とするための表示に関する登記を申請した。

6
本件建物の居宅部分と共同住宅部分とが、構上及び利用上において明確に区分されている→区分する登記を申請  

 

(別紙 2 )

【登記記録等の内容】

1 本件建物の敷地の登記記録の抜粋

(表題部)
所在 A市B町二丁目
地番  5 番 27
地目 宅地
地積 239.59 m2

(権利部)
甲区  2 番 A市B町二丁目 5 番 10 号 乙山一郎
乙区 (登記事項なし)

 

④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。

1 本件建物の敷地の登記記録
建物区分登記を
申請→件建物は区分建物となる→地と区分建物の所有者が同一→敷地所有権は所有権敷地権となり,分離して処分できない
敷地の所有権は移転しない旨の希望→
敷地権のない区分建物とする分離処分可能規約の設定が必要→規約証明書を添付→解答用紙第2の添付情報に 「規明書」と記録

 


2 本件建物の登記記録の抜粋

(表題部)
所  在 A市B町二丁目 5 番地 27
家屋番号  5 番 27
種  類 居宅・共同住宅
構  造 軽量鉄骨造合金メッキ鋼板ぶき 3 階建
床 面 積  1 階 83. 63 m2
      2 階 86. 95 m2
      3 階 55. 48 m2
原  因 平成 26 年 5 月 1 日新築

(権利部)
甲区  1 番 A市B町二丁目 5 番 10 号 乙山一郎
乙区  1 番 記載省略

 

2 本件建物の登記記録 
登記申請書で、従前の建物の登記記録として転写


3 本件建物の調査の結果

⑴ 本件建物の測定値は,軽量鉄骨の柱の中心からの距離である。
⑵ 軽量鉄骨は両側が被覆されており,柱の中心から内壁までは,7.5cmである。
⑶ 1 階,2 階,3 階は,各階平面図中のA点及びB点で一致している。
⑷ 家屋番号は,A地方法務局の登記官と相談し,(イ)居宅部分を 5 番 27 の 1、(ロ)共同住宅部分を 5 番 27 の 2 とすることとした。

 

4 本件建物の各階平面図(現況図)の抜粋

 

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答案用紙

 

 

1.問題把握

手順①~④により問題把握が完了。
①前文、調査図:「申請人」「対象土地」「申請する登記」を読み取る。
②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。
③問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。この時点で「×:理解できない部分」は読み飛ばす。
④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。

・本件建物を(イ)居宅部分 5 番 27 の 1と(ロ)共同住宅部分 5 番 27 の 2 に区分する建物区分登記を申請
→問2:登記申請書→問3:(イ)居宅部分 5 番 27 の 1の各階平面図と建物図面を作図
・(ロ)共同住宅部分 5 番 27 の 2のみを所有権移転するため、敷地の所有権を一体化しない分離処分可能規約を添付して、建物区分登記を申請
→問1:(本件建物の一部のみ所有権移転登記をするために必要な登記申請に際して、区分建物とその敷地に関する原則を踏まえた教示)

 

2.各階平面図の作図

作図メモ:建物の形状の左上を原点としたX座標とY座標の累計の数値をメモ記載事項:
各階平面図への床面積の記載は不要だが,申請書に記録するため,内壁で囲まれた部分の水平投影面積を計算
区分建物のため, 階数の表示は1階部分,2階部分及び3階部分とする
床面積の計算:
区分建物のため、床面積は内壁で囲まれた部分の水平投影面積
1階と2階を階層的に区分し,2階部分の専有部分の玄関が1階にある
→1階部分の2階に通じる玄関部分は2階部分の専有部分の床面積とする
→専有部分(イ)は3階建の建物となる
本件建物の各階平面図の辺長は、軽量鉄骨の柱の中心からの距離で,柱の中心から内壁までは 7.5cm

専有部分(イ)
1階部分は 1.67×1.67=2.78 
2階部分は 11.68×6.22 +7.13×0.91 +5.31×0.91=83.97 m
3階部分は 2.58×0.91 +3.49×0.91 +11.68×3.49+7.13×0.91=52.77 m2

専有部分(ロ)
8.95×1.82 +11.68×4.4+6.22×0.91 +4.4 ×0.91=77.34 m2

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3.建物図面の作図 

1 建物の形状:専有部分の1階の形状を実線で書く→一棟の建物の1階の形状を点線で書く
2 土地の形状を書く

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4.登記申請書 

登記の目的 :建物区分登記

添付情報 :建物図面・各階平面図・代理権限証書 ・(分離処分を可能とするための公正証書による)規約証明書 

建物の表示:

1 区分した建物の表示(イ) 
・①行目
従前の非区分建物の登記記録から,家屋番号,種類,構造,床面積を転写
登記原因及びその日付「5番27の1、5番27の2に区分」 
・②行目
区分した建物の登記記録を記録
家屋番号:図面に付した符号(イ)を記録し、地番区域名を冠記→「(イ)B町二丁目5番27の1」
建物の種類,構造,床面積:種類は居宅。階層的区分→専有部分の構造には屋根の種類を表示しない。床面積は,専有部分の存する階を「○階部分」と記載 
区分した建物の登記原因及びその日付:「5番 27 から区分」

2 敷地権の表示(イ) 
分離処分可能規約を提供するため,敷地権の表示に関する登記の申請は不要
→原因及びその日付欄「記載不要」

 

3 区分した建物の表示(ロ) 
建物区分登記→1個の登記記録上の建物を複数の区分建物に→新たに作成する区分した建物の表示が必要
・①行目
種類(共同住宅),構造, 床面積、予定家屋番号も記録
→家屋番号欄に、図面に付した符号(口)を記録し、地番区域名を冠記→「(ロ)B町二丁目5番27の2」
建物の種類,構造,床面積:種類は共同住宅。階層的区分→専有部分の構造には屋根の種類を表示しない。床面積は,専有部分の存する階を「○階部分」と記載 
区分した建物の登記原因及びその日付:「5番 27 から区分」

4 敷地権の表示(ロ) 
分離処分可能規約を提供するため,敷地権の表示に関する登記の申請は不要
→原因及びその日付欄「記載不要」

 

5.問1(本件建物の一部のみ所有権移転登記をするために必要な登記申請に際して、区分建物とその敷地に関する原則を踏まえた教示)

本件建物を区分すると,各専有部分と敷地利用権が一体化するが、共同住宅部分の所有権のみを会社に移転するため,分離処分可能規約を添付して建物区分登記を申請する必要がある。
→「本件建物を区分すると,それぞれの専有部分と床面積に応じた持分で敷地の所有権が一体化するため,分離処分可能規約を設定する必要がある。」

 

解答例

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出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成