H27-2共有
共有に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アウ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 エオ
ア A、B及びCが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分は各3分の1)について、AがB及びCに無断で自己の単独名義への所有権の移転の登記をした場合には、Bは、Aに対して、Cの持分については所有権の移転の登記の抹消登記手続を請求することができない。
正しい
共有者の持分について不実の持分移転登記がされている場合,当該登記によって妨害状態が生じているといえることから、共有者の1人から保存行為として、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができるが、(最判平15.7.11)
本肢のように、B及びCの持分が、第三者ではなく他の共有者Aに移転している場合、妨害状態とはいえず、
BがAに対して所有権の移転の登記の抹消登記手続を請求できるのは、自己Bの持分に限られ、Cの持分については請求することができない。
イ A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分はAが3分の2、Bが3分の1)について、CがBのみの承諾を得て占有している場合には、Aは、Cに対して、当該土地の全部の明渡しを請求することができる。
誤り
Aの共有持分の価格が過半数を超えるときでも、共有者の1人Bが排他的に使用している場合、当然の明渡請求は認められない(最判昭 41.5.19)。
本肢の場合、共有者の1人Bの承諾を得てCが占有しているため、Aは、Cに対して、当該土地の全部の明渡しを請求することができない。
ウ A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分は各2分の1)がCにより不法に占有されたことを理由として、AがCに対して、その損害賠償を求める場合には、Aは、Bの持分の割合に応じた部分も含めた損害全部につきこれを請求することができる。
誤り
共有物の不法行為に対する損害賠償請求権は,自己の持分についてのみ行使できる(最判昭 41.3.3、最判昭 51.9.7)。
エ A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分はAが3分の2、Bが3分の1)について、AがBに無断で宅地造成工事をして当該土地に変更を加えたときは、当該土地の原状の回復が可能であったとしても、Bは、Aに対して、当該土地の原状回復を請求することができない。
誤り
共有者の1人Aが、他の共有者Bの同意を得ることなく共有物に変更を加えた場合、他の共有者は,共有物を現状に復することが不能であるなどの特段の事情がある場合を除き、各自Bの共有持分権に基づいて、Aに対して単独で変更により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることができる(最判平10.3.24)。
オ A及びBが共有し、所有権の登記名義人となっている土地(持分はAが3分の2、Bが3分の1)について、A及びBが共同してCに賃貸している場合において、Cの債務不履行を理由とする賃貸借契約の解除は、Aが単独ですることができる。
正しい
共有地の賃貸借契約の解除は管理行為であるため、持分の価格の過半数で決する(民法252条、最判昭39.2.25)。
よって、本肢の場合、A及びBが共同してCに賃貸している場合でも、Cの債務不履行を理由とする賃貸借契約の解除は、持分の過半数を持つAが単独ですることができる。