H27-1瑕疵ある意思表示
詐欺又は強迫による意思表示に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アウ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 エオ
ア Aの代理人Bが相手方Cを欺罔して、Cが所有する土地をAに売り渡す旨の売買契約を締結させた場合には、AがBによる詐欺の事実について知らないときであっても、Cは、詐欺を理由としてその意思表示を取り消すことができる。
正しい
代理行為について瑕疵があるか否かは,原則として,実際にその行為をした代理人(B)自身について決定される(民法101条1項2項)。
イ AがBに欺罔された結果、法律行為の要素に錯誤を生じて意思表示をした場合には、Aは、詐欺のよる意思表示の取消しを主張することはできるが、錯誤による意思表示の無効を主張することはできない。
誤り
詐欺によって意思表示をしたとき、同時に錯誤(動機の錯誤)に陥っている場合が多い。詐欺取消しも錯誤取消しも表意者保護のための制度であり、表意者(A)が選択的に主張することができる(大判大11.3.22)。
ウ AのBに対する意思表示が第三者Cの強迫によりされた場合には、Bがその事実を知らないときであっても、Aは、強迫を理由としてその意思表示を取り消すことができる。
強迫による意思表示の取消しは,詐欺の場合と異なり第三者強迫の規定がないため、第三者(C)が強迫をした場合、相手方(B)がその事実を知らなくても、Aは意思表示を取り消すことができる(民法96条3項反対解釈)。
エ AがBの強迫によりその所有する土地をBに売却し、AからBへの所有権の移転の登記がされた場合において、その後、BがCに当該土地を転売した後に、Aが強迫を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消したときは、Aは、Bへの所有権の移転の登記を抹消しない限り、Cに対して所有権を主張することができない。
強迫による意思表示の取消しは詐欺の場合と異なり第三者保護規定がなく、
Aは、売買の意思表示取消し前の善意の第三者(C)にも対抗することができる(民法96条3項反対解釈)。
オ Aが、Bの詐欺により、Bからその所有する土地を買い受け、BからAへの所有権の移転の登記がされた後、AがBに欺罔されていることを知らないまま、当該土地にCを抵当権者とする抵当権を設定し、その旨の登記がされた場合において、Cが当該抵当権の設定時にBによる詐欺の事実を知らなかったときは、Aは、詐欺を理由としてAB間の売買の意思表示を取り消すことができない。
詐欺による意思表示の取消しは、善意かつ無過失の第三者に対抗することができない(民法96条3項)。
「第三者」とは、詐欺による意思表示を前提として、取消し前に新たに独立の法律上の利害関係を有するに至った者をいう。
本肢の場合、Aは、第三者(C)に対抗することはできないが、当事者(A・B)間で意思表示を取り消すことは可能である。