H25-3占有権
占有権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
1 アウ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 エオ
ア 法人の代表者が建物を当該法人の機関として占有しつつ、当該代表者個人のためにも占有していた場合には、当該代表者は、その占有を奪われたときであっても、当該代表者個人としての占有回収の訴えを提起することができない。
株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を占有している場合、
土地の直接占有者は会社であって,当該取締役は会社の機関としてこれを所持するにとどまるのであって,単に会社の機関として所持するにとどまらず,取締役個人のためにも所持するものと認めるべき特別の事情のない限り,当該取締役は直接占有者ではない(最判昭32.2.15)。
本肢の場合、取締役個人のためにも所持するものと認めるべき特別の事情があり、当該代表者個人として占有回収の訴えを提起することがで きる。
イ 悪意の占有者であっても、その占有を奪われたときは、占有回収の訴えを提起することができる。
占有訴権の提起に,占有権原の有無や,占有を侵害した相手方の善意・ 悪意等は問わない。
ウ 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その占有の開始の時から悪意の占有者とみなされる。
本権の訴訟の敗訴者は,訴え提起の時から悪意の占有者とみなされる (民法189条2項)。
エ 代理人によって占有をする場合における占有の善意又は悪意は、その代理人について決する。
占有が善意か悪意か,その占有が侵奪されたかどうかについては,占有代理人について判定する(大判大11.11.27)。
オ 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その代理人がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
指図による占有移転では,占有代理人に以降は第三者のために占有する ように命じ,譲受人(第三者)がそれを承諾することにより占有は移転する(民法184条)。