土地家屋調査士・測量士補独学最短合格塾

独学で最短合格するテキスト選び「広告・PR」

H25-22建物書式

 C市D町一丁目3番2号に住所を有する甲野春男及び甲野冬子は,C市D町一丁目12番所在の家屋番号12番の1の建物(以下「本件旧建物」という。)を共有していたが、道路の拡幅工事に伴い,本件旧建物のうちの主である建物については解体した上でその建材を用いて隣地に再築し(以下再築した建物を「本件新建物」という。),本件旧建物のうちの附属建物については増改築工事を行うとともに,同じく共有していた家屋番号12番の2の建物(以下「本件取壊建物」という。)については取り壊した。
 土地家屋調査士民事花子は,甲野春男及び甲野冬子から,本件旧建物,本件新建物及び本件取壊建物に関し必要となる全ての表示に関する登記の申請手続の代理並びに当該登記について必要な調査及び測量を依頼され,(別紙1)の土地家屋調査士民事花子の調査及び測量の結果】並びに(別紙2)の【本件旧建物の登記記録の抜粋】及び(別紙3)の 【本件取壊建物の登記記録の抜粋】のとおり,調査及び測量を行った。
 以上に基づき,次の問1から4までに答えなさい。

 

①前文、調査図:「申請人」、「対象建物」、「申請する登記」を読み取る。

・申請人 :甲野春男及び甲野冬子(共有)
・対象建物 :C市D町一丁目12番の土地にある家屋番号12番1の建物(本件旧建物), 解体再築した建物(本件新建物),家屋番号12番2の建物(本件取壊建物)の計3個 
・申請する登記:
本件旧建物の主である建物を解体し,その建材を用いて隣地に建物(本件新建物)を再築
本件旧建物の附属建物について増改築工事済
→既存建物全部を取壊し,その材料を用いて建物を建築する場合(再築)や, 既存の建物を解体して他の場所へ移築する解体移転の場合、既存の建物との同一性が認められない。
→既存の建物が滅失して新たな建物が新築されたものとする。 
→本件旧建物には附属建物があるので、主である建物の滅失に係る登記は,(建物滅失登記ではなく,)附属建物を主である建物に変更する建物表題部変更登記を申請。(附属建物の増改築工事も記載。)
本件新建物については建物表題登記を申請 

家屋番号12番2の建物(本件取壊建物)を取壊し済
→本件取壊建物の建物滅失登記を申請

 

 

問1  別紙第 22問答案用紙第1の登記申請書の空欄を埋めて,土地家屋調査士民事花子が申請すべき本件旧建物に関する登記の申請書を完成させなさい。

③ 問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。まだ「×:理解できない部分」は読み飛ばす。

問1:登記申請書1 :×本件旧建物の建物表題部変更登記

問2  別紙第 22 問答案用紙第2欄の登記申請書の空欄を埋めて、土地家屋調査士民事花子が申請すべき本件新建物に関する登記の申請書を完成させなさい。

問2:登記申請書2 :×本件新建物の建物表題登記

問3  土地家屋調査士民事花子は,甲野春男から,本件取壊建物に関する登記の申請に関し、自分だけが関与し,甲野冬子は関与しない方法を採ることができないかとの依頼を受けたことから,甲野春男に対し,必要となる登記の内容,その申請の可否及び根拠について説明した。この場合における土地家屋調査士民事花子の説明として適切な内容について,別紙第 22 問答案用紙第3欄を用いて,記載しなさい。

問3:共有者の1人からの申請の可否 ×

問4  別紙第 22問答案用紙第4欄を用いて,問2の申請書に添付すべき建物図面及び各階平面図を完成させなさい。

問4:×
問2の本件新建物の建物表題登記に添付する建物図面及び各階平面図


(注)

1 本問における行為は全て適法に行われており,法律上必要な書類は全て適法に作成されているものとする。

2 登記の申請は,書面申請の方法によってするものとする。

3 建物図面は 500 分の1の縮尺により,各階平面図は 250分の1の縮尺により,それぞれ作成すること。

4 訂正,加入又は削除をしたときは,訂正は訂正すべき字句に線を引き,近接箇所に訂正後の字句を記載し,加入は加入する部分を明示して行い,削除は削 除すべき字句に線を引いて,訂正,加入又は削除をしたことが明確に分かるように記載すること。

②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。

・注1:適法であり書類が揃っている:×
・注2:書面申請:×
・注3:建物図面 500 分の 1 ,各階平面図 250 分の 1 :×
・注4: ○ 建物図面に記載する距離の単位は,小数点以下1 位まで
・注5:訂正方法:×

 


(別紙1)

土地家屋調査士民事花子の調査及び測量の結果】

1  甲野春男及び甲野冬子は,本件旧建物のうちの主である建物を一旦解体し,その建材を用 いて,隣地において,次の〔各階平面見取図1〕のとおり,解体前の当該主である建物と同一 の形状の本件新建物を再築した(本件新建物の種類,構造及び床面積については,解体前の当該主である建物の登記記録との相違点はない。また,本件旧建物のうちの附属建物については,次の〔各階平面見取図2〕のとおり増改築工事を行った上,現在,美容院として使用している。

④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。

別紙1:【土地家屋調査士民事花子の調査及び測量の結果】

1
本件新建物の種類,構造及び床面積は,本件旧建物の主である建物と同一
本件旧建物の附属建物は増改築工事を行った上で, 美容院として使用→ 床面積の変更+種類の変更→理髪店, 美容院は「店舗」

 

2  本件旧建物のうちの主である建物及び本件取壊建物の解体工事は平成25年7月26日に完了し,本件新建物の再築工事は同年8月22日に完了した。
本件旧建物のうちの附属建物の増改築工事は同年8月18日に完了しており,その構造は増改築工事の前と後とで同一である。

3  1及び2の工事は,いずれも株式会社乙川建設が行っており,工事に当たって新たに必要となった建築材料も同社が提供したが,甲野春男及び甲野冬子は,その完成と同時に材料費及び施工費を同社に支払い,登記の申請に必要となる書類も同社から受領している。

2, 3 
本件旧建物の主である建物の取壊しの日付は平成30年7月26日
附属建物の増改築工事の日付は平成30年8月18日 
本件新建物の新築工事は平成30年8月22日 

 

4  本件新建物及び本件旧建物のうちの増改築工事後の附属建物に係る甲野春男及び甲野冬子の各共有持分は,いずれも2分の1である。

4
本件新建物の共有持分→本件新建物の表題登記は記載の持分で申請 

 

5  C市D町一丁目10番の土地は次の概略図]の点D, C, E,F及びDを順次直線で結んだ範囲の土地であり,C市D町一丁目 11 番の土地は〔概略図〕の点A,B,C,D及びAを順次直線で結んだ範囲の土地である。

概略図では,10番の土地と11番の土地の筆界が不明
→本件新建物の所在が不明
→建物図面を作図して,本件新建物の所在を判断 

 

6  C市D町一丁目12番の土地は,道路拡幅予定線である〔概略図〕の点G及びHを結ぶ直線 を分筆線として, 12番1の土地と12番2の土地に分筆する分筆の登記が平成25年8月5日付けでされている。

6
本件旧建物の敷地が平成 30 年8月5日に分筆
→本件旧建物の建物表題部変更登記には所在の変更も必要

f:id:tochikaokuchosashi:20220126150626p:plain



 

 

〔筆界点の座標値〕

f:id:tochikaokuchosashi:20220126150654p:plain



 

f:id:tochikaokuchosashi:20220126150730p:plain

(注)
1 〔概略図〕は,現地調査を行った際に,簡易に作成したものである。
2 〔概略図〕中の [  ] 内の数字は,土地の地番である。
3 距離を表す〔概略図〕,〔筆界点の座標成果〕,〔各階平面見取図1〕及び〔各階平面見取図2〕中の数値の単位は,全てメートルである。
4 〔概略図〕中の敷地境界からの距離は,全て外壁までの距離である。
5 各建物の構造について,鉄骨柱の両面は,被覆されている。 なお,測定値は,柱の中心からのものである。
6 各建物の壁厚は,全て 20 cm である。
7 各建物の天井までの高さは,全て 2.5 m 以上である。
8 各建物の隅角部は、全て直角である。
9 [各階平面見取図1〕中の○印は,各階の重なる部分を示す。

 

〔概略図〕,〔筆界点の座標成果〕,〔各階平面見取図1〕及び〔各階平面見取図2〕、(注)
本件新建物は軽量鉄骨造で,柱の両面が被覆→床面積は柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積 

 

f:id:tochikaokuchosashi:20220126150934p:plain

 

④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。

別紙2:本件旧建物の登記記録 

本件新建物の種類,造及び床は,本件旧建物の主である物と同一
→本件新建物の建物表題登記では種類・庫、構造・軽量鉄骨造亜鉛メッキ板ぶき2階建

 

f:id:tochikaokuchosashi:20220126150959p:plain



別紙3:本件取壊建物の登記記録 
権利部甲区:甲野春男と甲野冬子の共有

 

答案用紙

f:id:tochikaokuchosashi:20200610171039p:plainf:id:tochikaokuchosashi:20200610171108p:plain

 

解説

1.問題把握

手順①~④により問題把握が完了。

①前文、調査図:「申請人」「対象土地」「申請する登記」を読み取る。
②注意事項:「×例年同様な事項」、「○例外的な事項」をチェック。
③問:先に問を読み、別紙の 「○:重要事項」を知る。この時点で「×:理解できない部分」は読み飛ばす。
④別紙:③問に答える「○:重要事項」を読み取る。

・申請人 :甲野春男及び甲野冬子(共有)
・申請する登記:
本件旧建物について、主である建物の取壊しにより,附属建物を主である建物とする建物表題部変更登記を申請。(附属建物の増改築による床面積と種類の変更、さらに所在にも変更あり。これらを一の申請情報で申請。) 
本件新建物について、建物表題登記を申請→建物図面及び各階平面図を作図 

 

2 各階平面図の作図 


本件新建物について、新築した建物の各階平面図と建物図面の2つの図面を同一の1枚の用紙に作図。各階平面図を用紙左側に書き,建物図面を右側に書く。 

作図メモ:建物の形状の左上を原点としたX座標とY座標の累計の数値をメモ
記載事項:床面積、求積表を記載。建物の所在欄は,建物図面を作図後に判断 
床面積の計算:求積表上で柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積を計算

f:id:tochikaokuchosashi:20220201134246j:plain

 

3.建物図面の作図 

座標値を用いて土地の形状を書き、次に建物の形状を書く。 
→作図の結果、本件新建物の所在は「C市D町一丁目 11 番地, 10 番地」

f:id:tochikaokuchosashi:20220201134310j:plain

 

4 登記申請書

1 本件旧建物の建物表題部変更登記
登記の目的 :建物表題部変更登記
添付情報 :建物図面・各階平面図・所有権証明書(増築部分)・代理権限証書 
申請人 :持分の記載なし
C市D町一丁目3番2号 甲野春男
C市D町一丁目3番2号 甲野冬子
建物の表示 :
・所在が敷地の分筆により変更→変更後の所在は,所在欄の次の行に記載→登記原因及びその日付は,分筆登記日付=「平成30年8月 5日分筆により変更」
・所在変更に伴う家屋番号の変更は,登記官の職権でされるため、変更後の家屋番号の記載は不要 
・1行目に,従前の登記記録から,主である建物の家屋番号,種類,構造, 床面積を転写。
登記原因及びその日付は,主である建物の取壊しの日付=「平成30年7月26日取壊し」 
・次の行に,新たに主である建物とする附属建物の種類,構造,床面積を記録。
登記原因及びその日付は「平成30年7月26日主である建物に変更」(主である建物の取壊しの日付と同一) 
主である建物に変更した後に,新たな主である建物について表題部の変更があった場合,登記原因及びその日付は「平成30年7月26日符号1 の附属建物を主である建物に変更,平成30年8月18日種類変更,増築」と記録→通常、表題部変更では「3年月日増築」と記録するが, 主である建物を滅失したことによる変更登記の場合,変更後の登記事項を記録するため,3などの冠記は不要。 
・さらに次の行から,主である建物に変更したものも含め,附属建物の表示を転写
→主である建物に変更した附属建物の登記原因及びその日付は「平成30 年7月26日主である建物に変更」

2 本件新建物の建物表題登記
登記の目的 :建物表題登記
添付情報 :建物図面・各階平面図・所有権証明書・ 住所証明書・代理権限証書 
申請人 :建物表題登記のため持分を記載
C市D町一丁目3番2号 持分2分の1 甲野春男
C市D町 一丁目3番2号     2分の1 甲野冬子
建物の表示 :
・所在は、C市D町一丁目 11 番地, 10 番地
・家屋番号は登記所が付番 するものなので,空白とする。 
・1行目に建物の種類,構造,床面積を記載。登記原因及びその日付は, 建物工事完了日付=「平成26年8月22 日新築」

 

5  問3( 本件取壊建物に関する登記について)

本件取壊建物に関する登記について、必要となる登記の内容、甲野春男からの申請(共有者の1人からの申請)の可否及び根拠について説明する。
→建物が滅失したときは,表題部所有者または所有権の登記名義人は1月以内に建物滅失登記を申請しなければならない。これは報告的登記であり保存行為なので、共有者の一人から申請できる。この場合は,申請書には申請する共有者の1人を表示すれば足りる。 
→解答「本件取壊建物について建物滅失登記を申請する必要がある。建物滅失登記の申請は保存行為なので,共有者の一人である甲野春男から申請することができる。」

6 解答例

f:id:tochikaokuchosashi:20220201134550j:plain

f:id:tochikaokuchosashi:20220201134730j:plain



 

出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成