H25-1未成年
未成年者Aが親権者Bの同意を得ることなく、自己が所有する甲土地についてCとの間で 売買契約を締結した場合(以下この売買契約を「本件売買契約」という。)に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
なお、Aは婚姻しておらず、また、甲土地に係る処分の許可及び営業の許可も、受けていないものとする。
1 アウ 2 アエ 3 イウ 4 イオ 5 エオ
ア Aが成年者であることを信じさせるため詐術を用いた場合には、Aが未成年者であることをCが知っていたときであっても、Aは、本件売買契約を取り消すことができない。
制限行為能力者が,行為能力があるかのように偽って行為をした場合, もはや法の保護に値しない。そこで,この場合には,取り消すことができ なくなる(21 条)。もっとも,「詐術」といえるためには,相手方が制限行 為能力者であることについて善意である必要がある。
イ Aは、成年に達する前であっても、Bの同意を得れば、本件売買契約を追認することができる。
制限行為能力者(成年被後見人を除く)も,法定代理人・同意権者の同意を得れば,有効に追認をすることができる(124条2項2号)。
ウ Aが成年に達する前に、CがBに対して1か月以内に本件売買契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をした場合において、Bがその期間内に確答を発しないときは、本件売買契約を追認したものとみなされる。
未成年者が制限行為能力者である間に法定代理人に対してされた催告が 無返答の場合,追認が擬制される(20条2項)。
エ Cが甲土地を更にDに売却した場合には、Aは、Dに対して取消しの意思表示をしなければ、本件売買契約を取り消すことができない。
未成年者がなした取消しは,法定代理人の同意を得る必要がなく,未成年者は単独で取り消すことができる(民法120条1項)。
また,取り消すことができる行為の相手方が確定している場合、その取消しまたは追認は,相手方に対する意思表示によってする(民法123条)。
相手方が取消しの対象となっている行為によって取得した権利を第三者に譲渡した場合でも,取消しの意思表示は,取消しできる行為の直接の相手方である譲渡人に対して行う(大判昭6.6.22)。
オ Aは、成年に達した後、異議をとどめずに本件売買契約の代金をCから受領した場合には、本件売買契約を取り消すことができない。
追認をすることができるとき以降に,取り消すことができる行為について,民法125条1項列挙事由に該当する行為があった場合,取消権者の意思にかかわらず,原則として, 法律上当然に追認があったものとみなされる(民法125条1項本文)。
取消権者が債務者として履行する場合だけでなく,本肢のように,債権者として受領する場合も法定追認となる(大判昭8.4.28)。