H24-3不動産の物権変動
甲土地がAからBへ、BからCへと順次譲渡された場合における次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
1 アウ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 エオ
ア 甲土地の所有権の登記名義人がいまだAのままである場合であっても、Cは、Aに対し、甲土地の所有権を主張することができる。
所有権が転々移転した場合の前主・後主の関係にある者は「第三者」にあたらない(最判昭43.11.19)。
イ 甲土地の所有権の登記名義人がいまだAのままである場合には、Cは、Bの相続人であるDに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
被相続人からの譲受人は,相続人に対しては登記なくして不動産の所有権を主張することができる。これは,相続人は被相続人を包括承継するので、(民法896条本文)
相続人と被相続人を同一人とみなし,譲受人との関係は当事者の関係となり,対抗関係ではないと考えられる。
ウ 甲土地の所有権の登記名義人がいまだAのままである場合において、A、B及びCの三者間で、AからCへの直接登記名義を移転する旨の合意をしたときは、Bの債権者であるEは、自己の債権を保全するため、Bに代位して、Aに対し、Bへの所有権の移転の登記手続を請求することができない。
A→B→Cと不動産の所有権が移転した場合に,中間者BをとばしてAからCに直接登記を移転すること(中間省略登記)は,三者間に特約(合意)がある場合にのみ認められる。この場合,BのAに対する登記請求権も消滅しないとされている。
エ 甲土地の所有権の登記名義人がいまだAのままである場合には、Cは、Bに対する登記請求権を保全するためであっても、Bに代位して、Aに対し、Bへの所有権の移転の登記を請求することができない。
Aが土地をBに売却し,BはCに転売したとき、Aに登記がある場合,BはAに対して移転登記手続請求ができる。よって,Cは自己の登記移転登記請求権を保全するため,Bに代位して、Aに対し,Bへ の所有権の移転の登記手続を請求することができる。
オ AとBとの間の売買契約に基づいてAからBへ甲土地の所有権の移転の登記がされた場合において、AがBによる詐欺を理由としてその売買契約に係る意思表示を取り消した後、Bへの所有権の移転の登記を抹消する前に、BからCへの甲土地の譲渡が行われていたときは、Cは、自己への所有権の移転の登記をしなければ、Aに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
不動産がA→Bと譲渡され、移転登記もされた後に,AはAB間の契約を取り消したが、その後,いまだBのもとに登記があるうちに,さらにB→ Cと譲渡された。
AC間の法律関係は,Bを起点としてB→A,B→Cの二重譲渡があったものと構成し(対抗関係),Aは,Cの善意,悪意にかかわらず,登記を具備しなければ,Cに所有権を対抗することができない(大判昭17.9.30)。