H24-2条件
法律行為に付された条件に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ
ア 農地の売買契約について、「農業委員会の許可を受けなければ、農地の所有権は移転しない。」旨の条項を設けた場合において、売主による故意の妨害行為があったために農業委員会の許可を受けることができなかったときは、買主は、農業委員会の許可を受けたものとみなして、当該農地の所有権を取得することができる。
農地法の適用のある農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても,買主は条件を成就したものとみなすことはできない。農地の売買は公益上の必要に基づいて知事の許可が必要とされているのであって,民法130条1項の適用に服さない。
イ 甲土地の買主が甲土地の売買代金の支払いを遅滞している場合において、売主がした「2週間以内に甲土地の売買代金を支払わないときは、売買契約を解除する。」旨の意思表示は、単独行為に条件を付すものであるから、無効となる。
解除に条件・期限をつけることはできない。ただし,履行の催告と同時に,催告期間内に適法な履行のないことを停止条件とする解除の意思表示をすることは有効である(大判明43.12.9)。
ウ 「Aが結婚したら、Bは、Aに対し、B所有の甲土地を贈与する。」旨の契約をA及びBが締結した場合には、当事者は、甲土地について、条件付所有権の移転の仮登記をすることができる。
権利の設定,移転,変更または消滅に関して請求権(始期付きまたは停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む)を保全しようとするときは,仮登記をすることができる(法105条2項)。
よって本肢のように,停止条件付きの贈与による所有権移転仮登記は申請することができる。
エ 「Aが大学に合格したら、Bは、Aに対し、B所有の乙建物を贈与する。」旨の契約をA及びBが締結した場合において、Cの放火により乙建物が滅失したときは、Aは、大学に合格する前であっても、Cに対し、乙建物の価値相当額の損害の賠償を請求することができる。
条件付法律行為の各当事者は,条件の成否が未定である間は,条件が成 就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができ ない(民法128条)。よって、条件成就の履行が不可能になった場合,買主に対して債務不履行責任ないしは不法行為責任に基づく損害賠償責任を負うことになる。ただし,これら条件付権利の侵害による損害賠償は,条件成就前には請求することができない。
オ 「Aが大学で進級することができなかったら、Bは、Aに対して支払ってきた奨学金をその後は支払わない。」旨の契約をA及びBが締結した場合において、Aが大学で進級することができなかったときは、Bは、Aが大学で進級することができなかったことを知らなくても、Aに対して奨学金を支払う義務を免れる。
解除条件は、一定の事実の発生により,法律行為の効力が消滅する(民法127条2項)。
よって本肢のように,当事者の知・不知を問わない。