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H22-3袋地所有者の囲繞地通行権

公道に至るための他の土地の通行権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。

なお、甲土地、乙土地及び丙土地の位置関係は、下図のとおりであり、甲土地から公道に出るためには、乙土地を通行するより丙土地を通行する方が損害が少ないものとする。


   1 アエ   2 アオ   3 イウ   4 イオ   5 ウエ

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ア Dが丙土地を所有している場合において、Aが所有する一筆の土地を甲土地と乙土地に分筆して、甲土地をBに譲渡し、その後、乙土地をCに譲渡したときは、Bは、乙土地について通行権を主張することができる。

 

誤り

 

分割(土地の一部の譲渡)によって公道に通じない土地(袋地)が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者(譲渡人又は譲受人)の所有地のみを通行することができる。(民法213条)

また、この通行券は残余地につき特定承継が生じた場合にも消滅せず、袋地所有者は、残余地以外の、袋地と公道を行き来する土地(囲繞地を通行できない(民法210条1項、最判平2.11.20)。  

よって、Bが一筆土地を甲土,乙土地に分筆した上、土地をAに譲渡し、その後、BがCに乙土地を譲渡した場合、

Aの乙土地に対する通行権は消滅せず、残余地(乙土地)以外の土地=丙土地を通行することはできない。

 

民法213条(公道に至るための他の土地の通行権)

第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 

民法210条 (公道に至るための他の土地の通行権)

第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

  

 

イ Bが丙土地を所有している場合において、必要があるときは、甲土地を所有するAは、Bが所有する丙土地に公道に至るための通路を開設することができるが、甲土地の地上権者であるCは、丙土地に公道に至るための通路を開設することができない。

 

誤り

 

袋地所有者の(公道に至るための)囲繞地通行権は、地上権者(民法267条、民法210条)や、対抗力のある賃借権者(最判昭36.3.24)にも認められるため、

甲土地の地上権者であるCは、丙土地に公道に至るための通路を開設することができる。(民法211条2項)

  

民法267条(相隣関係の規定の準用)

第二百六十七条 前章第一節第二款(相隣関係)の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する。ただし、第二百二十九条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用する。

  

民法210条 (公道に至るための他の土地の通行権)

第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

  

民法211条 (公道に至るための他の土地の通行権)

 第二百十一条 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
2 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる。

  

 

ウ Cが丙土地を所有している場合において、Aが所有する一筆の土地を甲土地と乙土地に分筆して、乙土地をBに譲渡したときは、Aは、乙土地について通行権を主張することができない。

 

誤り

 

分割(土地の一部の譲渡)によって公道に通じない土地(袋地)が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者(譲渡人又は譲受人)の所有地のみを通行することができる。(民法213条2項)

よって、Bが一の土地を甲土地,乙土地に分筆した上、甲土地をAに譲渡した場合、Aは乙土地のみ通ることができる。 

    

 

民法213条(公道に至るための他の土地の通行権)

第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 

   

 
エ Cが乙土地及び丙土地を所有している場合において、所有者であるAから甲土地を譲り受けたBが甲土地についてAから所有権の移転の登記を得ていないときは、Bは、乙土地及び丙土地のいずれについても通行権を主張することができない。

 

誤り

 

地所有権を取得したとき、その所有権の登記がなくても囲繞地所有者お囲繞地に利用権を有する者に対して、通行権を主張することができる。(民法210条1項)

よって、袋地(甲土地)所有権を取得したBは、対抗要件としての所有権の移転の登記をすることなく、乙土地及び丙土地のいずれについても通行権を主張することができる。

  

 

民法210条 (公道に至るための他の土地の通行権)

第二百十条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖がけがあって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。

  

 

オ Cが丙土地を所有し、Aがその所有に係る甲土地及び乙土地のうち乙土地について抵当権を設定していた場合において、当該抵当権の実行としての競売による競落により、Bが乙土地を取得したときは、Aは、乙土地について通行権を主張することができる。

 

誤り

 

分割(土地の一部の譲渡)によって公道に通じない土地(袋地)が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者(譲渡人又は譲受人)の所有地のみを通行することができるが、(民法213条)

同一人の所有に属する数筆の土地の一部が、担保権の実行としての競売による競落により袋地となった場合でも、この囲繞地通行権は認められる(最判平5.12.17)。 

  

民法213条(公道に至るための他の土地の通行権)

第二百十三条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 

 

 

 

 

 

出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成