H21-1取得時効と登記
Aは、平成2年1月1日、B所有の甲土地を、自己の所有地であると過失なく信じて占有を開始し、以後、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と甲土地を占有している。次の対話は、この事例における取得時効と登記に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
1 アイ 2 アエ 3 イオ 4 ウエ 5 ウオ
教授: まず、平成10年1月1日に甲土地がBからCに譲渡されたという事例で質問します。この場合において、Aは、平成15年1月1日に、Cに対して甲土地の取得時効を主張することができますか。
学生:ア Aは、所有権の移転の登記をしなくても、Cに対して甲土地の時効取得を主張することができます。
正しい
B所有の不動産をAが自主占有して時効期間が進行中に、当該不動産がBからCに譲渡された後、平成12年1月1日にAの時効が完成した。
このとき、Aは、C所有の不動産を時効取得したものとし、AとCは物権変動の当事者類似の関係となり、Cは「第三者」(民法177条)にはあたらない。
よって、Aは、登記なくして,時効取得をCに対抗できる(最判昭41.11.22)。
教授: 次に、CがBから甲土地を譲り受けたのが平成13年1月1日であったという事例で質問します。この場合には、Aは、平成15年1月1日に、Cに対して甲土地の時効取得を主張することができますか。
学生:イ この場合には、Aは、所有権の移転の登記をしなければ、Cに対して時効取得を主張することができません。
正しい
B所有の不動産をAが時効取得したものの,いまだ登記をしていない間に、BがCに土地を譲渡した場合、AとCは,対抗関係に立つ(最判昭33.8.28)。
(Aが時効取得した不動産を,BがCに対して譲渡する行為は、B→A, B→Cの二重譲渡と考えられ、)Aは,登記なくして,時効取得をCに対抗することができない。
一方、AとBは当事者の関係にあり、Bは「第三者」にはあたらず、Aは,登記なくして,時効取得をBに対抗することができる。
教授: 同じ事例で、Aが、平成15年1月1日に、Bに対して甲土地の時効取得を主張する場合は、どうでしょうか。
学生:ウ この場合も、Aは、所有権の移転の登記をしなければ、Bに対して時効取得を主張することができません。
誤り
B所有の不動産をAが時効取得したものの,いまだ登記をしていない間に、BがCに土地を譲渡した場合、AとCは,対抗関係に立つ(最判昭33.8.28)。
(Aが時効取得した不動産を,BがCに対して譲渡する行為は、B→A, B→Cの二重譲渡と考えられ、)Aは,登記なくして,時効取得をCに対抗することができない。
一方、AとBは当事者の関係にあり、Bは「第三者」にはあたらず、Aは,登記なくして,時効取得をBに対抗することができる。
教授: では、同じ事例で、Aが、平成2年1月1日から20年が経過するのを待って、その後に、20年間の占有に基づいて、Cに対して甲土地の時効取得を主張することはできますか。
学生:オ Aは、自己の所有地であると過失なく信じて甲土地の占有を開始したので、20年の取得時効を主張することはできません。
誤り
時効の効果は、時の経過により生ずるのではなく、援用の意思表示によって確定的に生ずるので、
自己の所有地であると過失なく信じて甲土地の占有を開始したA(10年の短期時効取得を援用することができる者)が、20年間占有を継続した場合でも、20年の長期取得時効を援用することができる。(大判昭25.11.20)。