H20-7土地の境界
次の対話は、筆界に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
1 アエ 2 アオ 3 イウ 4 イエ 5 ウオ
教授: では、筆界の成り立ちについて説明してください。
学生:イ 筆界は、明治時代に行われた地租改正事業により創設されたといわれています。徴税目的のために、所有者とその土地の位置及び形状等を調査し、台帳に登録しました。その際、一筆の土地として把握され、図面に公示された区画を成す現地の線が原始的な筆界と考えられています。
正しい
教授: 筆界は、その後も新たに創設されていますが、それはどのような場合ですか。
学生:ウ 分筆の登記がされた場合、地積に関する更正の登記がされた場合、土地区画整理法等の規定に基づく換地処分がされ、その登記がされた場合などがあります。
誤り
地積に関する更正の登記がされた場合、
更生により地積に増減があっても、
筆界になんら変動を生じないし、筆界が新たに創設されることもない。
教授: では、いわゆる筆界確定訴訟の確定判決によって示される筆界はどのような性格のものですか。
学生:エ 裁判官が、過去に形成された筆界を探し出したもの、又は探究してもなお不明の場合に裁判官により再形成されるものです。この判決によって示される筆界は公的な存在ですので、この判決は登記官等の第三者にも効力が及びます。
正しい
筆界確定訴訟の判決により示される筆界が真実の筆界と一致していなくても、
判決が確定すれば、この判決に示さされた筆界が法的に唯一の筆界となる。
この判決は、登記官等の第三者にも効力が及ぶとされ、
筆界確定訴訟の判決に基づく登記申請は、たとえ登記官の実地調査権に基づく調査結果と符合しない場合でも、受理される。
教授: 無番地の山林と無番地の道路の境界線が、地図に準ずる図面に表されている場合に、その境界を現地において確認することができるとき、これは筆界特定申請の対象となる筆界と認められますか。
学生:オ 未登記の土地同士の境界であっても、先に述べました地租改正事業の際に作成された改組図やその後の更正図に示されていたものは筆界と認められるので、筆界特定の申請もすることができます。
誤り
筆界特定の対象となる筆界は、
「表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線」とされるので、(法123条1号)
いずれも表題登記がない土地(未登記の土地)同士の境は、筆界特定の対象となる筆界ではなく、筆界特定の申請もすることができない。
法123条(定義)
第百二十三条 この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。
二 筆界特定 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるところにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう。
三 対象土地 筆界特定の対象となる筆界で相互に隣接する一筆の土地及び他の土地をいう。
四 関係土地 対象土地以外の土地(表題登記がない土地を含む。)であって、筆界特定の対象となる筆界上の点を含む他の筆界で対象土地の一方又は双方と接するものをいう。
五 所有権登記名義人等 所有権の登記がある一筆の土地にあっては所有権の登記名義人、所有権の登記がない一筆の土地にあっては表題部所有者、表題登記がない土地にあっては所有者をいい、所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人を含む。