H18-3相続と登記
相続が関係する物権変動に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか(なお、DはBに対する関係で背信的悪意者に当たらないものとする。)。
1 アエ 2 アオ 3 イウ 4 イオ ウエ
ア Aがその所有する土地をBに譲渡したが、その旨の登記をしないまま死亡し、Aを相続したCがその土地について相続登記をしてこれをDに譲渡し、その旨を登記した場合、Bは、Dに対し、土地所有権の取得を対抗することができる。
誤り
被相続人からの譲受人(=B)は、相続人(=C)に対しては、登記なくして不動産の所有権を主張できる。
相続人は被相続人を包括承継 (民法896条本文)するので、相続人と被相続人を同一人とみなし、譲受人との関係は当事者の関係で、対抗関係ではないとされる。
一方、生前の被相続人からの譲受人(=B)と相続人からの譲受人(=D)とは、対抗関係となる(最判昭33.10.14)。
本肢の場合、Dが先に登記を受けたので、BはDに対し、土地所有権の取得を対抗することができない。(民法177条)
イ Aが死亡し、BとCがAを共同相続したが、Cが、Aの所有していた土地について、勝手に、Cが単独で取得する旨の相続登記をしてこれをDに譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、相続分に応じた土地持分の取得を対抗することができる。
誤り
共同相続人の1人(=C)が相続不動産について、勝手に単独相続登記をし、これをDに譲渡した場合、
他の共同相続人(=B)は、自己の相続分(持分)について、登記なく譲受人(=D)に対抗することができる。(最判昭38.2.22)
Cによる単独相続登記は、Bの持分に関する限り無権利の登記であり、さらに登記には公信力がないので、
その譲受人(=D)は、Bの持分に関する限り、その権利を取得しない。
ウ Aが死亡した後、その法定相続人であるBとCのうちCが適法に相続を放棄したが、Aの所有していた土地について、この放棄を前提とする相続登記がされる前に、Cの債権者Dが代位によりBとCを共同相続人とする相続登記をし、C名義の土地持分を差し押さえた場合、Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。
正しい
相続放棄については、遺産分割と異なり、第三者保護の規定がなく、(民法939条)
その登記がなくても、その効力を第三者に対抗することができる(最判昭42.1.20)。
よって、Cが相続放棄した後、Cの債権者DがCに代位して、相続財産である土地についてB,Cの共同相続の登記をしたうえ、Cの持分につき、差し押さえの登記をした場合でも、
Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。
民法939条 (相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
オ Aが死亡し、その共同相続人であるBとCとの間でAの所有していた土地をBが単独で相続する旨の遺産分割協議が成立したが、その土地について、Bが遺産分割協議を前提とする相続登記をする前に、CがBとCを共同相続人とする相続登記をし、C名義の土地持分をDに譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。
誤り
Aの不動産を共同相続したBとCとの間で、Bが単独で相続する旨の遺産分割協議が成立した後、CがCの持分をDに譲渡した場合、
Cの法定相続分について、Cを起点として、C→B、C→Dの二重譲渡があったものと考えられる。
BとDは、Cの法定相続分(Bの法定相続分の持分を超える部分)の承継については、対抗関係となる(民法899条の2・1項、最判昭46.1.26)。
よって、Bは、Cの土地持分の取得については、登記なくしてDに対抗できない。
民法889条の2 (共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。