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H17-3付合

次の対話は、甲建物の賃借人をA、所有者兼賃貸人をBとした場合の甲建物等の所有権の取得に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。

1 アイ   2 アオ   3 イウ   4 ウエ   5 エオ

 

教授; AがBの同意を得ないで甲建物の一室にエアコンを設置した場合には、エアコンの所有権の帰属はどうなりますか。
学生;ア AがBの同意を得ていないので、Bが所有権を取得します。

 

誤り

 

賃貸借が終了したときは、賃借人は、賃借物を返還しなければならず、(民法601 条)

その際は、借用物に付属させた物を収去する義務を負う(民法622条・民法599条1項)。

   

民法599条(借主による収去等)

第五百九十九条 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
3 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百条 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2 前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

  

民法601条(賃貸借)

第六百一条 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

  

 

教授; では、AがBの同意を得ないで甲建物に改装をした結果、改装前に1,000万円であった甲建物の価値が改装後に3,000万円となった場合には、甲建物の所有権の帰属は、どうなりますか。
学生;イ AがBの同意を得ていなくても、改装によって甲建物の価値が倍以上に増加していますから、甲建物の所有権は、Aに帰属します。

 

誤り

 

加工(民法246条)は、「動産」を加工して物を製作した場合に、

工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する規定である。 

また、賃借人による費用の償還請求(民法608条2項)は、

賃借人が賃借物について有益費を支出した場合、その償還請求の問題となるが、建物の所有権の帰属の問題とはならない。

 

民法246条(加工)

第二百四十六条 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
2 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。

  

民法608条(賃借人による費用の償還請求)

第六百八条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

  

  

教授; AがBの同意を得てAが提供した材料を用いて出窓を増築した場合において、AB間に所有権の取得について特約がないときは、出窓の所有権の帰属は、どうなりますか。 
学生;ウ 出窓には独立性が認められないので、AがBの同意を得ていても、出窓の所有権は、Bに帰属します。

 

正しい

 

不動産に対する動産の付合では、増築部分が、不動産の構成部分となり、独立性を失った場合には、その部分の所有権を留保することができない。 (民法242条本文)

 

民法242条(不動産の付合)

第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

 

  

教授; AがBの同意を得て、平屋の甲建物の2階として、独立した玄関口があり、かつ、1階とは内部で通じていない居宅を増築した場合において、AB間に所有権の取得について特約がないときは、甲建物の2階部分の所有権の帰属は、どうなりますか。
学生;エ 甲建物の2階部分が独立性を有し、区分所有権の対象となる場合には、Aがその所有権を取得します。

 

正しい

 

不動産に対する動産の付合では、増築部分が、不動産の構成部分となり、独立性を失った場合には、その部分の所有権を留保することができないが、(民法242条本文)

建物賃借人が,賃借建物の上に新たな建物を自己の費用で増築した場合,

当該部分が独立性(区分法1条における構造上の独立性と利用上の独立性)を有し,区分所有権の対象となれば、

特約のない限り, その増築部分の所有権は建物の賃借人に帰属する。(民法242条ただし書)

 

民法242条(不動産の付合)

第二百四十二条 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

 

区分法1条(建物の区分所有)

第一条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

 

    

教授; ところで、Aが増築した部分の所有権をBが取得することとなる場合に、Aは、Bに対し、金銭の支払いを請求することができますか。
学生;オ その場合であっても、Aは、当該部分を継続して使用することができますので、Bに対して金銭の支払いを請求することはできません。

 

誤り

 

付合,混和または加工の規定の適用によって損失を受けた者は、その償金を請求することができる(民法248条)。

本肢のAは、増築部分を継続して使用するときでも、その部分の所有権をBが取得することとなる場合には、Bに対して金銭の支払いを請求することができる。

 

民法248条(付合、混和又は加工に伴う償金の請求)

第二百四十八条 第二百四十二条から前条までの規定の適用によって損失を受けた者は、第七百三条及び第七百四条の規定に従い、その償金を請求することができる。

 

  

出典:「土地家屋調査士試験」(法務省)(http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index5.html)を加工して作成
出典:「測量士・測量士補国家試験及び登録」(国土地理院)(https://www.gsi.go.jp/LAW/SHIKEN/SHIKEN-top.htm)を加工して作成
出典: e-Gov法令検索 (https://elaws.e-gov.go.jp/)を加工して作成